八卦の象意、六十四卦の大意

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坤	艮	坎	巽	震	離	兌	乾
泰	大畜	需	小畜	大壮	大有	夬	乾	乾
臨	損	節	中孚	帰妹	睽	兌	履	兌
明夷	賁	既済	家人	豊	離	革	同人	離
復	頤	屯	益	震	噬嗑	随	无妄	震
升	蠱	井	巽	恒	鼎	大過	姤	巽
師	蒙	坎	渙	解	未済	困	訟	坎
謙	艮	蹇	漸	小過	旅	咸	遯	艮
坤	剥	比	観	予	晋	萃	否	坤

陰陽

【高島易断】
［左を陽、右を陰］○天地○日月○昼夜○健順○剛柔○男女○夫婦○君臣○大小○進退○満欠○動静○開閉○表裏○真偽○昇降○貴賎○富貧○正邪○清濁○善悪○生死○気形

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乾

【高島易断】
乾は天なり、乾燥は天の所為にして、造化の本たることを謂うなり、この卦三奇純陽にして欠くる所なきの象なり、純陽欠くる所なきものは気なり、その徳は健なり
天○太陽○円○大○始○統○施○明○御○正○大和○寧○剛○誠○天子○君○父○夫○大人○聖○君子○首○西北○秋○辛○肺臓○戌亥○天命○四九数○厳粛○高貴○易簡○大度○大器○老成○運転○真実○満足○上達○自然○至徳○闢○卓見
（初爻）騰貴○確乎○不援
（二爻）博愛○保合○立誠○寛仁○［二文字読めず］○優勝○純粋
（三爻）侵凌○勉強○君子

【八卦象義訣】（●＝舊本。○＝象徵正文加補。◎＝象徵解再增）
●爲天、○爲剛、○爲實、●爲圜、○爲始、○爲行、○爲純粹精、●爲君、○爲大人、●爲父、○爲夫、○爲老夫、○爲武人、○爲戰、○爲攻、○爲戎、●爲首、○爲龍、●爲馬、●爲良馬、●爲老馬、●爲瘠馬、●爲駁馬、○爲虎、○爲童牛、○爲豶豕、○爲角、○爲輿、○爲大輿、○爲大車、○爲金柅、●爲玉、●爲金、○爲淵、○爲大川、○爲郊、○爲日、○爲野、○爲高陵、○爲夕、○爲莫夜、●爲寒、●爲冰、●爲大赤、○爲玄、●爲木果。○爲大師、○爲彊不息、○爲亢、○爲飛、○爲威、○爲惕、○爲厲、○爲衣、○爲統、○爲施、○爲美利、○爲躍、○爲城、○爲錫、○爲祥、○爲福、○爲富、○爲喜、○爲得、○爲孚、○爲允、○爲包、○爲光、○爲敬、○爲藥、○爲君子、○爲慍、○爲觸、○爲棟隆、○爲五行金、○爲西北隅、○爲秋、◎爲辛味、◎爲白色、◎爲商音、◎爲肺臟、◎爲戌亥時、○爲四九數。
◎爲元、◎爲亨、◎爲通、◎爲利、◎爲貞、◎爲正、◎爲大、◎爲大和、◎爲性、◎爲命、◎爲情、◎爲神、◎爲鬼、◎爲氣、◎爲變、◎爲化、◎爲告命、◎爲至、◎爲時、◎爲后、◎爲男、◎爲夫子、◎爲聖、◎爲賢、◎爲上帝、◎爲道、◎爲德、◎爲仁、◎爲禮、◎爲知、◎爲義、◎爲善、◎爲美、◎爲休、◎爲寬、◎爲學、◎爲問、◎爲志、◎爲誠、◎爲信、◎爲明、◎爲晰、◎爲造、◎爲發揮、◎爲長、◎爲高、◎爲上、◎爲尙、◎爲尊、◎爲尊、◎爲嘉、◎爲樂、◎爲亨［すすめまつる］、◎爲天子、◎爲祉、◎爲榮、◎爲祿、◎爲遏惡、◎爲揚善、◎爲平、◎爲則、◎爲事、◎爲業、◎爲幹、◎爲確、◎爲動、◎爲占、◎爲決、◎爲治、◎爲愼、◎爲嚴、◎爲好、◎爲願、◎爲夬、◎爲辨、◎爲固、◎爲功、◎爲名、◎爲成、◎爲博、◎爲盈、◎爲流、◎爲久、◎爲世、◎爲頂、◎爲面、◎爲聲、◎爲言、◎爲直、◎爲先、◎爲進、◎爲前［すすむ］、◎爲改、◎爲革、◎爲見、◎爲覩、◎爲旁、◎爲羣、◎爲類、◎爲朋、◎爲聚、◎爲疇、◎爲新、◎爲專、◎爲備、◎爲起、◎爲幾、◎爲祐、◎爲罔、◎爲存、◎爲試、◎爲出、◎爲用、◎爲勿、◎爲亡、◎爲災、◎爲害、◎爲咎、◎爲尤、◎爲犯、◎爲干、◎爲憂、◎爲艱、◎爲伐、◎爲驕、◎爲萬、◎爲物、◎爲陽物、◎爲資、◎爲御、◎爲象、◎爲易、◎爲闢戶、◎爲渉、◎爲不困竆、◎爲終、◎爲不速［まねかず］、◎爲窒、◎爲密、◎爲素、◎爲坦坦、◎爲虩虩、◎爲考、◎爲考［なきちち］、◎爲旋、◎爲茹、◎爲荒、◎爲鉉、◎爲牙、◎爲馮河、◎爲遠、◎爲遐、◎爲不遺、◎爲不敗、◎爲逐、◎爲勝、◎爲連、◎爲揚、◎爲卽、◎爲忌、◎爲頄、◎爲臀无膚、◎爲之、◎爲蔚、◎爲豹。（增補）

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坤

【高島易断】
坤は地なり、天に承けて萬物を成育伸長するの義にして、造化の用たり、この卦三偶純陰にして容れざる所なきの象なり、純陰にして容れざる所なきものは、順の性なり
地○地球○至○生○厚○載○含弘○牝馬○迷○常○柔○主利○庶民○臣○妻○母○凡庸○小人○腹○西南○甘味○胃腑○未申○五十数○夏秋之間○衆庶○平凡○吝嗇○惜○与○文○平均○乏○貯蓄○暗愚○収斂○布蔵○鞄○受承○役せらる○服従○共同○省略○徒党○労働○乱雑○厚顔○易簡○［一文字読めず］○朋類○国○器○能○法○化○黄色
（初爻）卑賤○奴僕○不善○馴○邪
（二爻）抱○撫［りっしんべんに血］○慈愛○方正
（三爻）无成（なすなし）

【八卦象義訣】
●爲地、○爲柔、○爲虛、○爲方、○爲靜、○爲厚、○爲載、○爲後、○爲承、○爲有終、○爲常、○爲无疆、○爲直、○爲臣、●爲母、○爲妻、○爲婦、○爲宮人、●爲腹、○爲血、○爲尸、●爲牛、●爲子母牛、○爲馬、○爲牝馬、○爲魚、●爲大輿、●爲釡、○爲缶、●爲柄、●爲布、○爲裳、○爲嚢、○爲霜、○爲冰、○爲野、○爲邑、○爲國、○爲陸、●其於地也爲黑。○爲黄、●爲文、○爲章、●爲吝嗇、○爲含、○爲括、●爲均、●爲衆、○爲迷、○爲晦、○爲冥、○爲小人、○爲田、○爲納、○爲甘、○爲大川、○爲亂、○爲庭、○爲安、○爲受、○爲允、○爲失、○爲孚、○爲羞、○爲隍、○爲陂、○爲不戒、○爲不富、○爲輿、○爲五行土、○爲西南隅、○爲夏秋際、◎爲甘味、◎爲黄色、◎爲宮音、◎爲脾胃、◎爲未申時、○爲五十數。
◎爲元、◎爲亨、◎爲利、◎爲貞［ただしき］、◎爲貞［つねある］、◎爲大人、◎爲道、◎爲光、◎爲生、◎爲大、◎爲至、◎爲徦、◎爲化、◎爲經、◎爲弘、○爲能、○爲簡、○爲形、○爲法、◎爲陰物、◎爲女、◎爲物、◎爲愼、◎爲謹、◎爲敬、◎爲義、◎爲禮、◎爲德、◎爲大君、◎爲體、◎爲理、◎爲器、◎爲裕、◎爲月、◎爲民、◎爲邦、◎爲致養、◎爲資、◎爲永、◎爲敦、◎爲羣、◎爲朋、◎爲類、◎爲品、◎爲萬、◎爲咸、◎爲諸、◎爲頻、◎爲蕃庶、◎爲翕、◎爲萃、◎爲積、◎爲康、◎爲寧、◎爲懷、◎爲服、◎爲馴、◎爲從、◎爲習、◎爲藏、◎爲闢、◎爲致役、◎爲无成、◎爲疑、◎爲卑、◎爲闔戶、◎爲合、◎爲不孤、◎爲不違、◎爲未得、◎爲翩翩、◎爲竆、◎爲害、◎爲昧、◎爲說、◎爲困、◎爲左［しりぞく］、◎爲无、◎爲儉、◎爲消、◎爲難、◎爲下、◎爲虧、◎爲裒、◎爲死、◎爲醜、◎爲膚、◎爲慾、◎爲邪、◎爲不虞、◎爲階、◎爲大牲、◎爲亨［すすめまつる］、◎爲帛、◎爲漿、◎爲寡。（增補）

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震

【高島易断】
震は雷なり、動は雷の所為にして、萬物雷の生気に由り、鼓動発育せざるはなし、すなわち造化の用たり、この卦一陽二陰の下に在り、陽は剛にして動き升るの性あり、陰は柔にして静に降るの性あり、いま一陽二陰の下に抑えらる、ゆえに奮激して動き上らんとする象なり、これを人にすればあたかも大人の小人の下に居り、知者愚者の下に坐するが如く、奮起して発出するの象なり
雷○動○働○勤○稼○憤激○奮発○幾（きざし）○決断○動揺せしむ○修省○賢人○祭主○長男○足○東方○春○酸味○青色○肝臓○卯○三八数○往○音○壮夫○威権○道路○活○意気○地○勇○勢○活発○励○跋扈○烈○立志○電気○気転利○精力○声を発す○地震○冒
（初爻）木○大作○事○発起○征討○志○怒○進○弾劾○努力○侠気○率先○排欝○攻撃○昇進○気概○捗る○判決○運否天賦○威迫○侵略
（二爻）影響○名声○驚嚇○雷同せらる○［一文字読めず］○蹂躙
（三爻）驚嚇○雷同せらる○［一文字読めず］○暴挙○傍若無人○躓○蹂躙

【八卦象義訣】
●爲雷、●爲長男、○爲侯、○爲官、●爲足、○爲履、●爲龍、○爲隼、○爲角、○爲馬、●其於馬也爲善鳴、●爲馵足、●爲作足、○爲駁馬、●其於稼也爲反生、○爲鳴、○爲鼓、○爲車、○爲虛筐、●爲大塗、○爲衢、○爲巷、○爲藩、○爲林、◎爲木、●爲蒼筤竹、●爲萑葦、○爲茅、●爲蕃鮮、○爲莽、●爲旉、○爲華、○爲決、◎爲躁、●其究爲健、○爲建、○爲大作、●爲玄黄、○爲幾、○爲往、○爲求、○爲克、○爲矢、○爲發、○爲出、○爲開、○爲事、○爲遄、○爲圭、○爲用、○爲功、○爲道、○爲肱、○爲奔、○爲起、○爲虞［やまもり］、◎爲虞［もっぱら］、○爲亨、○爲頻、○爲行、○爲逐、○爲遷、○爲不息、○爲征、○爲躋、○爲袂、○爲徦、○爲五行木、○爲正東方、○爲正春、◎爲酸味、◎爲靑色、◎爲角音、◎爲肝臟、◎爲正卯時、○爲三八數。
◎爲天、◎爲日、◎爲明、◎爲時、◎爲甲、◎爲甲拆、◎爲上帝、◎爲鬼神、◎爲聖、◎爲賢、◎爲王、◎爲命、◎爲公、◎爲君子、◎爲夫子、◎爲丈夫、◎爲祭主、◎爲元、◎爲大、◎爲通、◎爲利、◎爲宜、◎爲貞、◎爲正、◎爲德、◎爲仁、◎爲生、◎爲不死、◎爲義、◎爲長、◎爲志、◎爲心、◎爲意、◎爲願、◎爲筮、◎爲占、◎爲政、◎爲立、◎爲奮、◎爲振、◎爲興、◎爲造、◎爲脩、◎爲新、◎爲貴、◎爲休［よし］、◎爲期、◎爲音、◎爲樂、◎爲殷、◎爲薦、◎爲配［すすむ］、◎爲壯、◎爲上、◎爲升、◎爲乘、◎爲果、◎爲敢、◎爲折、◎爲變、◎爲渝、◎爲過、◎爲之、◎爲浸［すすむ］、◎爲施、◎爲撝［あぐる］、◎爲逆［むかう］、◎爲字、◎爲草、◎爲帥、◎爲使、◎爲獲、◎爲狩、◎爲制、◎爲渉、◎爲濟、◎爲拯、◎爲反、◎爲復、◎爲省、◎爲恐懼、◎爲虩虩、◎爲蘇蘇、◎爲索索、◎爲不喪、◎爲征伐、◎爲罸、◎爲刑、◎爲承、◎爲敕、◎爲趾、◎爲徒、◎爲陵、◎爲翰、◎爲牙、◎爲夙、◎爲拇、◎爲射、◎爲墉、◎爲解、◎爲忿、◎爲懲、◎爲跛、◎爲酌、◎爲亨［すすめあげる］、◎爲渫、◎爲厲、◎爲危、◎爲畏、◎爲愆、◎爲逵、◎爲蔀、◎爲沛、○爲翔、◎爲可、◎爲匕鬯、◎爲驚百里、◎爲鵠、◎爲玉、◎爲左右、◎爲乘馬、◎爲過。（增補）

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巽

【高島易断】
巽は風なり、風の物に従い、萬物を鼓舞渙散して、これを生育するは、その性にして、造化の用たり、この卦一陰二陽の下に在り、陽は強く、陰は弱し、いま一陰二陽の下に降り降るの象なり、これを人にすれば、気概乏しく、恭順して人の気に入らんとするの象なり
風○恭服○伏入○進退不果○如才なし○長女○股○東南方○春夏之間○酸味○白色○肝臓○辰巳○三八数○工○反目○魚○縄直○葛［一文字読めず］○命令○長○高○臭○依頼○風俗○教○妾○係○委託○恋○或○疑○勿恒（つねなし）○疾し○拝聴○会合○広告○散○闊渉○通○揉○生聞○随従○
（初爻）瓜○不勝（かたず）○陪従○靡○幇間○媚○首鼠○反間○［もんがまえ、下判らず］（うかがう）
（二爻）馴合○風采○風評○風致○布告○花主○周旋○優美○宥免○流行○投機○都合○工夫○薫陶○景気○経済○権柄○諷諫○風流○周（あまねし）○接待○融通○修好○比擬○推考
（三爻）躁動○軽薄○彷徨○漠然○狼狽○無稽○倉卒

【八卦象義訣】
●爲風、●爲長女、●爲工、●爲股、●其於人也爲寡髪、●爲廣顙、●爲多白眼、○爲反目、●爲雞、○爲翰音、○爲豚、○爲豕、○爲魚、○爲鮒、○爲瓶、○爲甕敝、○爲牀、○爲机、●爲繩、●爲直、○爲徽纆、○爲繘、●爲木、○爲楊、○爲茅、○爲葛藟、○爲瓜、○爲命、○爲大號、●爲進退、○爲往來、●爲不果、○爲伏、○爲潛、○爲從、○爲躍、●其究爲躁卦、●爲白、○爲齊、○爲絜、●爲長、●爲高、●爲臭、●爲近利市三倍、○爲幾望月、○爲蹢躅、○爲眇、○爲帛、○爲疾、○爲小人、○爲依、○爲五行木、○爲東南隅、○爲春、◎爲酸味、◎爲靑色、◎爲角音、◎爲肝膽、◎爲辰巳、◎爲三八數。
◎爲神、◎爲民、◎爲風俗、◎爲敎、◎爲婦、◎爲女壯、◎爲妾、◎爲順、◎爲係、◎爲繫、◎爲維、◎爲與、◎爲夷、◎爲不雨、◎爲戀如、◎爲莽、◎爲盥、◎爲闚、◎爲醜、◎爲憧憧、◎爲深、◎爲浚［ふかし］、◎爲或、◎爲疑、◎爲牛、◎爲憊、◎爲羸、◎爲勿恆、◎爲不勝、◎爲小、◎爲渫、◎爲臲卼、◎爲否、◎爲未悖、◎爲仇、◎爲渙、◎爲鸛。（增補）

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坎

【高島易断】
坎は水なり、水は萬物を滋潤するものなり、すなわち造化の用なり、坎の字は土の欠けたるを謂うものにして、水の低きに陥るを謂う、この卦一陽二陰の間に陥るの象なり、これを人にすれば、困難に陥りて艱めるの象なり
水○陥○陰伏○月○通○中男○耳○北方○冬○［歯に咸］味（かんみ）○黒色○腎臓○子○一六数○邪魔○狐○狡猾○穴○血○寒○不明○窮迫○盲人○険○不景気○悖○妨
（初爻）憂○苦労○欝閉○怨○萎靡○暗愚○心障○哀○寂寥○［一文字読めず］斥（ひんせき）せらる○貧窮○隠匿○厭○不快○機密○惰夫
（二爻）思慮○酒食○法律○習教○辛抱○大川○情（なさけ）○注意○慷慨○堪忍○［てへんに崔］心（さいしん）○心操○懺悔○氷解○済
（三爻）盗賊○寇○悪○神経症○刑○［うえ生した月］（わざわい）○疾○恥羞○害○敗○咎○醜○冤罪○呆（あきれる）○痛○薄命○［一文字読めず］○障○千辛萬苦○淫奔○破廉恥○滅亡○流離○流連○汚名○横着○姦雄○横奪○倒産○潰○嫉妬○無頼漢○窮策○詐欺○危急○悶○無情

【八卦象義訣】
●爲水、○爲泉、○爲雲、○爲雨、○爲下、○爲濡、○爲繻、●爲溝瀆、○爲塗、○爲中男、●爲盜、○爲寇、○爲惡人、○爲鬼、●爲耳、●爲耳痛、○爲心、●爲心病、○爲思、●爲加憂、○爲愁、○爲心惻、●爲豕、○爲馬、●其於馬也爲美脊、●爲亟心、◎爲馬壯、●爲下首、●爲薄蹄、○爲狐、○爲鼫鼠、○爲禽、○爲飛鳥、○爲鴻、○爲羽、○爲家、○爲宮、○爲牖、●爲矯、●爲輮、●爲弓、○爲弧、○爲射、○爲弋、●爲輪、○爲車、○爲輿、●其於輿也爲曳、●爲多眚、○爲禽［くるまき］、○爲穴、○爲缶、○爲簋、○爲罇、○爲酒、○爲食、○爲飮、○爲饋、○爲校、○爲桎梏、○爲蒺藜、○爲叢棘、○爲株木、○爲刑、○爲苦、○爲勞、○爲泥、○爲膏、●爲血、○爲汗、○爲德、●爲隱伏、○爲孕、○爲律、○爲儀、○爲曳、○爲引、○爲掣、●爲通、●爲赤、●爲月、●其於木也爲堅、●爲多心、○爲鞶帶、○爲毒、○爲習、○爲言、○爲眚、○爲次［やどり］、○爲石、○爲疾、○爲金、○爲難、○爲棟、○爲撓、○爲納、○爲信、○爲約、○爲羞、○爲承、○爲錫、○爲孚、○爲聞、○爲甃、○爲受、○爲寒、○爲冽、○爲勞、○爲五行水、○爲正北方、○爲正冬、◎爲鹹味、◎爲黑色、◎爲羽音、◎爲腎臟、◎爲正子時、○爲一六數。
◎爲夫、◎爲弟子、◎爲志、◎爲情、◎爲意、◎爲則、◎爲平、○爲稱、◎爲敎、◎爲原、◎爲得、◎爲禴、◎爲亨［すすめあげる］、◎爲大川、◎爲滿、◎爲盈、◎爲井、◎爲養、◎爲飽、◎爲濟、◎爲聰、◎爲愛、◎爲好、◎爲嘻嘻、◎爲宴樂、◎爲笑言啞啞、◎爲遂、◎爲入、◎爲險、◎爲難、◎爲災、◎爲害、◎爲患、◎爲敗、◎爲咎、◎爲尤、◎爲疑、◎爲忒、◎爲牽、◎爲罪、◎爲罰、◎爲而［かみきる］、◎爲竄、◎爲醜、◎爲喪、◎爲哀、◎爲泣、◎爲困、◎爲儉、◎爲吝、◎爲可。◎爲【上は生、下は母】（增補）

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離

【高島易断】
離は火なり、離は付着の義にして、物に麗きて発するは、火の所為なり、火は萬物を燥かし、物を明らかにす、すなわち造化の用たり、この卦一陰二陽の間に麗く、陽は強く陰は弱し、その勢い両付せざるを得ざるの象なり、これを人にすれば、火の明らかなるが如く、知識あるの象なり
火○文明○付着○知恵○中女○眼○南方○夏○苦味○赤色○心臓○午○二七数○日○大腹○網［目を横にしたものに古］○鋭（するどい）
（初爻）交錯○馬鹿正直
（二爻）見○文○照明○資財○善○才子○学士○係連○弁知○賞○爵○威○賢○无所容（いるるところなし）○捕える○優美○発明○怜悧○花華（はなやか）○晴○自得○洞察○機智○知覚○着眼○臨機応変○予期○鑑定○当意即妙○達観○聡明○条理○美麗○華奢○光○敏捷○網羅○形容○検査○燥かす○付会
（三爻）傍観○発表○眺○離間○怒○疾視○煩悩○過慮○狡猾○睨付○蔑○慢心○沸騰○憤懣○焦慮○扇動○災害○焦眉

【八卦象義訣】
●爲火、○爲焚、●爲日、○爲明、●爲電、●爲乾、○爲燥、●爲中女、○爲史、●爲目、○爲見、○爲見［あらわるる］、○爲心、●爲大腹、●爲雉、○爲鳥、○爲翼、○爲巣、○爲飛、○爲上、○爲牛、○爲牝牛、●爲龜、●爲鼈、●爲蟹、●爲蠃、●爲蚌、○爲墉、○爲缶、○爲簋、○爲茀、●爲甲冑、●爲戈兵、●其於木也爲科上槁。○爲孚、○爲鬼、○爲文、○爲朋［たから］、○爲福、○爲照、○爲五行火、○爲正南方、○爲正夏、◎爲苦味、◎爲徵言、◎爲心臟、◎爲正午時、○爲二七數。
◎爲元、◎爲亨、◎爲利、◎爲貞、◎爲正、◎爲大人、◎爲君子、◎爲順、◎爲黄、◎爲善、◎爲良、◎爲信、◎爲知、◎爲主、◎爲晳、◎爲遏惡、◎爲揚善、◎爲邦、◎爲日中、◎爲晝、◎爲昃、◎爲時、◎爲期、◎爲待、◎爲暦、◎爲旬、◎爲介、◎爲治、◎爲問、◎爲折、◎爲章、◎爲辨、◎爲貝［たから］、◎爲賞、◎爲爵、◎爲嘉、◎爲喜、◎爲威、◎爲志、◎爲好、◎爲脩、◎爲反、◎爲耳、◎爲聰、◎爲聞、◎爲賢、◎爲貞［つね］、◎爲常、◎爲恆、◎爲熯、◎爲易、◎爲觀、◎爲察、◎爲視、◎爲覿、◎爲闚、◎爲莅、◎爲矍矍、◎爲作、◎爲交錯、◎爲錯然、◎爲突、◎爲死、◎爲棄、◎爲无所容、◎爲涕、◎爲醜、◎爲網罟、◎爲狩、◎爲田、◎爲離、◎爲矢、◎爲用、◎爲亡、◎爲嗃々、◎爲炳、◎爲蔚、◎爲從、◎爲亨飪、◎爲翔、◎爲災、◎爲豫防、◎爲戎。（增補）

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艮

【高島易断】
艮は山なり、止まるなり、止まりて動かざるは、山の所為なり、山は地下の火力に由り、突出して、高く地上に聳え、止まりて動かざるものなり、この卦は一陽二陰の上に在り、陽は上るの性あり、陰は下るの性あり、いま一陽二陰の上に至る、更に進むべき所なくして止まるの象なり、これを人にすれば、己れの見識を立て、止まりて動かざるの象なり
山○止○篤実○少男○手○東北方○冬春之間○甘味○黄色○脾胃○丑寅○五十数○惰夫○門［門のあいだに蠍の虫へんを省いたもの］（けつ）○狗○終始○敬粛○石○山嶽
（初爻）閑○従者○僅○陳腐○貯○因循○偏屈○隔意○止めらる
（二爻）守○小心○謙遜○操○保守○維持○約束○静謐○無事○止めらる○次（やどり）○質朴
（三爻）止めらる○頑固○背○家○取○防御○世情に通せず○疎○儲蓄○手心○扱○採用○掌握○［にんべんに居］傲○我意○高尚○剛［りっしんべんに復のぎょうにんべんを省いたもの］○厳格○楼閣○爪弾○権限○根性○障碍○孤立○抵触○境界○荘厳○謝絶○渋滞

【八卦象義訣】
●爲山、○爲邱、○爲陵、●爲徑路、●爲小石、○爲磐、○爲少男、○爲童蒙、○爲童僕、○爲小子、○爲人、○爲身、○爲軀、○爲背、○爲限［こしぼね］、○爲鼻、●爲手、●爲指、●爲狗、○爲龍、○爲虎、○爲鹿、●爲鼠、●爲黔喙之屬、●爲門闕、○爲家、○爲宮、○爲廬、○爲舍、○爲次、○爲君子、○爲童、○爲篤實、○爲逐逐、○爲取、●爲閽寺、○爲虞、○爲禦、○爲閑、○爲衛、○爲防、○爲庭、○爲居、○爲革、●爲果、●爲蓏、●其於木也爲堅、●爲多節。○爲玄黄、○爲戰、○爲摧、○爲戒、○爲勿、○爲匪、○爲弗、○爲不、○爲莫、○爲罔、○爲已、○爲罷、○爲失、○爲卽、○爲无、○爲遲、○爲高、○爲得、○爲執、○爲有、○爲廟、○爲握、○爲仇、○爲疾、○爲終始、○爲的顙、○爲五行土、○爲東北隅、○爲冬春際、○爲甘味、○爲黄色、○爲宮音、○爲脾胃、○爲丑寅時、○爲五十數。
◎爲光明、◎爲尊、◎爲德、◎爲賢、◎爲弟子、◎爲生、◎爲恭、◎爲保、◎爲省、◎爲顒若、◎爲敦、◎爲崇、◎爲牙、◎爲亡、◎爲多、◎爲牧、◎爲貞［かたし］、◎爲固、◎爲拘、◎爲宅、◎爲牀、◎爲與［およぶ］、◎爲以［およぶ］、◎爲言、◎爲識、◎爲節、◎爲寘、◎爲畜、◎爲否、◎爲竆、◎爲反、◎爲待、◎爲在、◎爲懲、◎爲窒、◎爲改、◎爲鞏、◎爲守、◎爲宗廟、◎爲喪、◎爲社稷、◎爲不獲、◎爲不見、◎爲不出位、◎爲動靜、◎爲退、◎爲不復、◎爲離、◎爲戶、◎爲蹇、◎爲誰、◎爲不可、◎爲遺、◎爲下、◎爲所、◎爲狐、◎爲遠。（增補）

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兌

【高島易断】
兌は沢なり、沢は水を受くるの地を謂うものにして、すなわち海なり、この卦一陰二陽の上に在り、陽は剛（つよ）く、陰は柔かなり、いま柔弱なるもの、陽剛の上にあげらる、これ悦ぶの象なり、これを人にすれば、あたかも少女の人に寵遇せられて喜ぶが如きの象なり、それ人喜ときは、口辺の法令の筋現わる、兌の字、蓋し義をこれに取るなり
沢○悦○見（あら）わるる○和順○毀折○少女○口○西方○秋○辛味○白色○肝臓○酉○四九数○妾
（初爻）商量○謎○調○謀
（二爻）講習○弁解○例言○円滑○方便○説明○誓○忠告○穏当○格言○予言○嗜○喩○妙○楽○歓待○愛敬○讃嘆○懐（なつく）○愉快○説諭○好○茶利○可愛○愛相○怜悧○得色○嬉
（三爻）口舌○笑○小人○不信○傷（そこなう）○論議○［てへんに奉］腹○発言○唱○陳述○呼吸○口実○喜悦○威令を行う○誘引○磁石○放言○駁撃○罵詈○冷笑○閉口○僻説○遁辞○決定○流言○利己○可笑○賄賂○詫○騙○喝采○［ひだり食みぎ余］沢○［言に狂］○唆○なまいき○噂○喧嘩○告発○媚○讒謗○［ひだり口みぎ可］（しかる）

【八卦象義訣】
●爲澤、○爲水、○爲泥、●爲少女、●爲巫、●爲妾、○爲娣、○爲幽人、○爲武人、○爲須、○爲人、●爲口、●爲口舌、○爲輔頬舌、○爲眇、○爲咥、○爲號、○爲笑、○爲嗟、○爲齎咨、○爲涕洟、●爲羊、○爲羝羊、○爲虎、○爲豹、○爲幾望月、○爲鳴鶴、○爲和、○爲和［こたうる］、●爲毀折、●爲附、●爲決、●其於地也爲剛鹵、○爲見、○爲恤、○爲譽、○爲歌、○爲戚、○爲嘉、○爲劓、○爲小人、○爲告、○爲雨、○爲不信、○爲谷、○爲言、○爲慶、○爲商、○爲戕、○爲五行金、○爲正西方、○爲正秋、◎爲辛味、◎爲白色、◎爲商音、◎爲肺臟、◎爲正卯時、○爲四九數。
◎爲義、◎爲朋友、◎爲講習、◎爲說、◎爲柔、◎爲下、◎爲素、◎爲栽成、◎爲盱、◎爲口說、◎爲羸、◎爲塗、◎爲致、◎爲刑、◎爲剭、◎爲斗、◎爲沬、◎爲斧、◎爲傷、◎爲介、◎爲議、◎爲鳴、◎爲絶、◎爲跛、◎爲貞［かたし］、◎爲常。（增補）

△

01 乾

【易学階梯】
乾は健なり、陽の体は剛にてその用は健なり、乾はもと八卦の名なり、この卦重乾ゆえにまた乾と名づく○剛健なる意あり○純粋なる意あり○鋭進する意あり○勇猛なる意あり○威厳ある意あり○決断ある意あり○壮盛なる意あり○昭明なる意あり○広大なる意あり○尊貴なる意あり○富饒なる意あり○盈満の意あり○正直なる意あり○勉強するの意あり○大志ある意あり○節倹なき意もあり○驕奢の意もあり○亢慢の意もあり○侵凌の意もあり○強暴なる意もあり○時においては秋とする意あり○病は精気虚耗の逆上甚だしき意あり○浮腫する意あり○発狂する意あり○重病なれば必死の意あり

【易学小筌】
この卦は公家大名以上の貴人には吉なれども平人には凶なり、その中に学者あるいは出家などには吉事と見ることもあり、理義を明らかに見合いて吉凶を断るべし○万事進むを凶、退くに吉○物事難義なる心あり、又道中などすること凶なり○住所辛苦あり、あるいは住居を離るるのことあり○損失あり、また盗難を防ぐべし○病難を慎むべし、病は凶なり○遺失は出ずべし○胎孕は安からず、またいまだ胎を成す願望成就しがたし○金銀などについて労あり、すべて思うこと調いがたし○仕損じて悔事あるべし○物を段々賦（くば）る意（こころ）あれば人もいろいろ世話苦労多しと知るべし○婚礼は半吉、大抵平らかなれども媒杯に付いて妨げあることあり○物の始めと終わりと兼ね備える気味あり、又物の首（かしら）となる意（こころ）もあり○人にたかぶりにくまるることあり○この卦は当世の人には利ろしからず、俗にいう位負けのする意なり

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02 坤

【易学階梯】
坤は順なり、陰の体は柔にてその用は順なり、坤はもと八卦の名なり、この卦重坤ゆえにまた坤と名づく○従順なる意あり○温厚なる意あり○安静なる意あり○順直の意あり○謙譲の意あり○恭敬の意あり○貞節の意あり○丁寧なる意あり○倹約の意あり○衆多の意あり○卑賤の意もあり○狭小の意もあり○虚耗の意もあり○衰微の意もあり○怯弱なる意もあり○怠惰の意もあり○暗昧なる意もあり○疑惑の意もあり○吝嗇の意もあり○遅鈍なる意もあり○偏執の意もあり○邪曲の意もあり○病は元気虚損し精力衰微する意あり○老耄の意あり○健忘の意あり○重病なれば必死の意あり

【易学小筌】
この卦は地の徳にして万物を生養する理あり、故に人のことに世話苦労ありと知るべし○願望調うべし○婚礼養子そのほか相談ごと段々に調うべし、急にすればさわり多し○胎孕安し○待ち人来たらず○病重し治るとも長し○衆議ありて力になる人を得るとす

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03 屯

【易学階梯】
屯は難（なやみ）なり、この卦坎雲上に在りていまだ雨とならず震雷下に在りていまだ発せざるの象なり、雲はいまだ雨とならず、雷はいまだ発せざるをもってその気鬱滞り煩悩す、すなわちこれ天地の難（なやみ）なり、故に屯と名づく○震動坎険の中にあり動いていまだ険を出るる能わざるものは難（なやみ）なり、ゆえに屯と名づく○震の疾行（はやくゆく）をもって坎の水険に遇って容易に渉るるを得ざるものは難（なやみ）なり、故に屯と名づく○坎の中男上に位し震の長男下に在りて長少位を失って家道斎（ととの）わざるものは一家の難（なやみ）なり故に屯と名づく○全体においては九五の君は上に位すれども坎険の主にて険に陥り初九の［危の卩を矢］は下に在れども震動の主にて勢いを得たり、天下二主に分かれ勢い二つに裂けて艸乱屯難の世となる、これすなわち天下の難（なやみ）なり、故に屯と名づく○生卦においてはもと比より来る、比にありては九五の一陽主位にてもと険（なや）みなしといえども来たって屯となれば坎険の主となりて中男にて険（なや）み有るものなり、又初九の一陽は無位なりといえども震動の主とて長男にて勢いあるものなり弟は位あってもって兄を拒み兄は齢の長ぜるをもって弟を凌ぐ、兄弟拒み凌いで家道乱る、これまた一家の難（なやみ）なり、故に屯と名づく○生卦においてはもと乾坤より来る、乾は純陽なり、坤は純陰なり、純陽は空なり、純陰は虚なり、空なれば物なく虚なれば事なし、物なく事なければ難（なやみ）あるなし、今来たりて屯となれば陰陽交錯の難（なや）み始めて生ず、故に屯と名づく○艱難の意あり○苦労する意あり○盈満の意あり○事を創（はじ）むる意にあり○驚き懼るる意あり○険み目前に在りてもってかえって居所を失わざる意あり○志の堅固なる意あり○事ありてはげみ勉むるときは後かならず成就する意あり○進むる能わずして時を俟つ意あり○堪忍する意あり○弟家督を継いで兄はかえって弟に養わるる意あり○病は疝積ありて攣急疼痛する意あり○積気胸［月に隔の右側］を否塞する意あり○留飲ある意あり○脚気の意あり○食滞にて煩悶苦痛する意あり

【易学小筌】
この卦は草のはじめて生じていまだ伸びざるの意にて万事につきその兆しはあれども相談ごとの類とりえなき意あり○龍の水中に住むの象ある卦なればその住所いまだ安からざる時、それ故に人も住居に付きてなやみありと知るべし○大河に臨んで渡らんとするの意にして危うく安からぬ時節なれば難ありと知るべし○水難とす、ゆえに旅立ち遠方を慎むべし○金銀等について悩あり○天運いまだ盛んならず物ごと慮る、進むこと利ろしからず○漸くに物の集まる義あり、末にも吉を得べきとも見るなり○婚姻吉とすることあれども変によって一概に吉と定めがたし、大抵遅滞す○胎孕安からず○病危うし、二爻三爻変ずるときは凶なり○待ち人おそし○遺失あれども尋ねがたし、処の違いあるべし

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04 蒙

【易学階梯】
蒙は昧なり、この卦艮山上にありて坎渓下にあり、雲は上りて山を覆い、霧は下りて渓を蔵す、すなわちこれ蒙昧の義なり、ゆえに蒙と名づく○艮山上に阻にて坎水下に険なり、山川険阻の地は東西とも弁じ難く行旅も爰に迷う、ゆえに蒙と名づく○坎泉艮山より出ず、泉の山より出ずるや源水一なりといえども末流百千に分かれてその至る所を知るべからざるものは蒙昧の義なり、故に蒙と名づく○艮止坎険の外にありけだし蹇は険みの内に止まり蒙は険の外に止まる、険みの内に止まりて出るる能わざるものは躬の開かざるるに艱めるものなり蹇の難みは王臣蹇蹇身の故に匪ず、蒙の難みは蹇に反して艱むべからざるに艱むこれ蒙昧の甚だしきものなり、故に蒙と名づく○内坎険にて外艮止なり、内難んでその心を苦しめ外止まりて行う能わざるものもまた蒙昧の甚だしきなり、故に蒙と名づく○艮は童なり、坎は蒙なり、これ童蒙幼稚にて未だ智を発せざるの象なり、ゆえに蒙と名づく○蒙昧の意あり○愚鈍にて宰割する能わざる意あり○暗昧にて他の為に欺かるる意あり○是非得失の弁りがたき意あり○妄想多き意あり○望み多き意あり○執蓍の意あり○多欲なる意あり○身を有（たも）つ能わざる意あり○物の穉小なる意あり○身上衰微して昏迷痛苦する意あり○出奔するものは再び帰り来たらざる意あり○篤実にして忠信なる意あり○始めは朦朧として後には著明なる意あり○病は疝毒にて腰下攣急疼痛する意あり○心気虚耗して昏愚なる意あり○水瀉の意あり

【易学小筌】
この卦は童蒙の義にして物の明白に決断して調うこと成りがたし、然れども段々と童の知恵つく意にて段々宜しきに向かうと知るべし○急にすることみな宜しからず○物の数々入り交じりたる象あれば人も苦労世話多くありと知るべし、然れども一つずつ物を分かつ如く終には思うこと成就すべし○諸事了簡ちがいあるべし慎むべし○したがって物事念入りてする事によろし、人に迷わさるることあらん、心を付くべし○心中に願い事あれども人につつしみて言い難き意あり、云い出してもすみやかに成りがたし○胎孕障りなし、但し三の爻変ずれば危うしとぞ○病は長し、治るともおそし○遺失尋ねがたし○待ち人遅し、途中まで滞ることあらん

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05 需

【易学階梯】
需は須なり、この卦坎雲乾天の上に在り雲天に上りていまだ雨となりて下らず、それ雨は百穀艸木を生じ禽獣魚鼈を育す、これもって万物咸雨沢の下るを須つ、雨沢の下るを須つは須つるの大いなるものなり、故に需と名づく○乾の鋭進をもって坎の陥険に遇い、直ちに進むる能わずして時の至るを須つゆえに需と名づく○乾行きてもって坎水に遇って容易に渉る能わずして時を須て渉らんとす、これもまた須の義なり、ゆえに需と名づく○須待の意あり○進む能わざる意あり○辛抱強き意あり○剛健なれども能時を須て険みに陥いざる意あり○希望の意あり○大志を抱いて時の至るを待つ意あり○養うの意あり○節操の意あり○生産とする意あり○飲食に饒なる意あり○遅滞の意あり○敬慎の意あり○病は心下に留飲ありて腹内鞕満する意あり○頭痛の意あり○反胃の意あり

【易学小筌】
この卦は諸事急にする事は成就しがたし、そのうえ却って難義にあう心あり、ゆるゆるとする時は吉なり、需（じっ）と待つなり、物を待って居る心にすべし○吉事あれども時節いまだ至らず、ゆえにときの至るを待つの心なり、例えば川とめにあうて居るの意に思うべし、無理に渡らんとせば険難に陥るべきの意なり○住居苦労あり、又旅行せば盗賊の難を防ぎ慎むべし○婚姻成りがたし○胎孕障りなし○病は長し○遺失急に知れがたし○まち人来たらず或いは来たれども遅し

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06 訟

【易学階梯】
訟は訴なり、この卦上乾剛にて下坎険なり、上は厳厲に過ぎて下を恵まず、下は艱苦に堪えずして上に訴う、これ訟の大いなるものなり、故に訟と名づく○乾天上にあり、坎水下に在り、天は升り水は降り天は西に行き水は東に流れて天水背き違う、これすなわち情背き意悖うて訟えの生る所以なり、ゆえに訟と名づく○彼は乾剛にして我を虐げ、我は坎険にして彼に苦しむ、已むるを得ずしてこれを上に訟う故に訟と名づく○内坎険にして外乾剛なり、内険むるありて外剛強なるものは上を畏れずしてよく訟を為すものなり、ゆえに訟と名づく○生卦においてはもと否より来る、否は上乾剛にして下坤柔、上乾実にて下乾虚なり、上は厳厲にて下を恵まず下は虚乏にて上に奉ぜず、君民意乖き上下情通ぜず今来たりて訟となれば九二の一陽坎の主となりて下民艱苦に耐えず已むるを得ずして上公に訴う、これもまた訟えの大なるものなり、故に訟と名づく○訴訟の意あり○論争闘争の意あり○乖き離るる意あり○悖り逆らう意あり○事を謀りて齟齬する意あり○親睦せざる意あり○嫉み憎む意あり○怨み憤うる意あり○奸計の意あり○外見剛強に見ゆれども内心艱苦する意あり○我は艱難困窮すれども彼は残忍にして救い助けざる意あり○病は胸［月編に隔てるの右側］否塞して下利［蕨からくさかんむりを省く］冷する意あり○気血不順の意あり

【易学小筌】
この卦は上下別れ別れになりて相交わざるの義、背き争うの卦なり○諸事調いがたし○心身安からず憂い悲しみ多し○論争事を慎むべし○貴人に対し背く意あれば我より目上の人に従う心をもって道理を忘るべからず○盗難を防ぐべし○疑いを受くることありて親しみを失う儀有○婚姻凶○病長し、されども治す○胎孕安し○遺失近くたずね求むべし○待ち人来たらず

△

07 師

【易学階梯】
師は衆なり、兵衆なり、軍旅の象なり、この卦坎水坤地の中にあり、水の地中にあるや衆多にして窮まり尽くるるなし、これすなわち兵衆の義なり、故に師と名づく○坤衆坎険に順うの象あり、それ険みに順うて衆人の起こるものは軍旅の事なり、故に師と名づく○坎の不測を坤の至静に伏し、坎の謀略を坤の帷幄に蔵す、不測を至静の中に伏し謀略を帷幄の中に蔵すものは軍旅の為なり、故に師と名づく○全体においては九二の一陽は五陰を統べ、五陰の衆は一陽の将に従う、古者五人を伍とし、五伍を倆とし、五倆を卒とし、五卒を旅とし、五旅を軍とし、五軍を師とす、皆五数をもって部伍を建つ、かつ一将を立つ、もとこれ一陽五陰を統べ、五陰一陽に従うの象あればなり、ゆえに師と名づく○全体においては一陽五陰に応じ、五陰一陽に従う、元帥衆将を指揮し、元帥に帰順するの象あり、ゆえに師と名づく○全体においては二五君臣相応の王者元帥に委任し元帥国に報して賊徒を征伐するの象あり、ゆえに師と名づく○軍旅の意あり○闘争の意あり○一人衆人と争う意あり○衆多の意あり○宰臣能事に幹たる意あり○憂患多き意あり○謀計多き意あり○伏蔵する意あり○生産の根本となるるを創立する意あり○逼塞する意あり○才能あれども用いられざる意あり○病は腹痛する意あり○小腹に塊物ある意あり○下血する意あり○生穀下利する意あり○

【易学小筌】
この卦は大人の徳ありて忠臣孝子なれば吉なり、常人には大抵利ろしからず、あらそいを慎むべし○住所身心辛苦あり、旅行など慎むべし○人になやまさるる意（こころ）あり、又人を害する意あり○物の入り組みて解けがたき意あり○人の頭となる理あり、事に依って考え合わすべし○淫欲盗難を慎むべし○婚姻凶○胎孕（さん）不安（むずかし）○病危うし、又変あらんとそ○待ち人思いもよらず来るべし○遺物出がたし○若し思いがけぬ幸福あらば却って凶ならん、諸事慎みて明白にせよ

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08 比

【易学階梯】
比は輔なり、親なり、和なり、この卦坎水坤地の上にあり水の地上にあるや水能く土に和し土能く水に親しむ、ゆえに比と名づく。全体においては一陽五陰に応じ、五陰一陽を援く、一君萬民に親しみ萬民一君を輔く、故に比と名づく。坤順坎信、我は彼に従い、彼は我に信ある義なり、ゆえに比と名づく○輔助の意あり○親睦の意あり○和合の意あり○安楽の意あり○喜悦の意あり○上は仁慈にして下は順従する意あり○節倹なくして費用多き意あり○愛情に過ぎて物に陥溺する意あり○惰弱なる意あり○主の行状善といえども良宰なきゆえに家政の斎（ととの）わざる意あり○養う意あり○病は元気虚弱にして胸［月編に隔の右側］に水毒ある意あり○胸痛する意あり

【易学小筌】
この卦は親しみ有りて人と相和楽するの卦なり、君の一陽を臣民の五陰が尊敬しまた君一人にして臣民の衆多を憐れむの象あり、ゆえに比卦を占得ば知音朋友あるいは一家などより力をそえらるる義あり○願望調うべし、少し遅し○婚姻なるべし、遅ければ調いがたし○胎孕安し○病長くして危うし○待つ事は信（たより）あるべし○遺物尋ねがたし、出るとも減少すべし○油断なく急にすること吉、延引すればととのいがたし

△

09 小畜

【易学階梯】
小畜は小しく止むるなり○この卦巽の従順をもって乾の鋭進するを止む、その義なお帷幕の矢石を止むるが如し、これいわゆる柔よく剛を制すの道なり、然りといえども柔をもって剛を止め弱をもって強を制すその道大いに止むるる能わずして小しく止む、故に小畜と名づく○乾の夫剛強にして鋭進するを巽の妻従順をもってこれを止む、然りといえども妻をもって夫を止め従をもって主を制すその道大いに止むるる能わずして小しく止む故に小畜と名づく○巽風乾天の上に在り風の天を行くや日月星辰を止めて墜すなし、なお紙？（いか）の空中に止まるが如し、然りといえども風の物を止むる【壱のヒを豆】是に動かさざるにあらず、ただ止めて墜さざるのみ、ゆえに小畜と名づく○全体においては六四の一陰上下五陽に応じ、一陰五陽を止め、宰相上下を制す、それ宰相の任たる上に君の非を諌め下も民の姦を御ぐ、然りといえども臣をもって君を止め寡をもって衆を服すその道大いに止むるる能わずして小しく止むるるをなす、ゆえに小畜と名づく○畜止の意あり○制止せらるる意あり○止息の意あり○畜聚の意あり○［くさかんむりに温のさんずいを糸偏］畜の意あり○畜養の意あり○巽与の言をもって人を諭せば必ず容れ用いらるる意あり○［ごんべんに風］諌の意あり○弱柳の風に靡くがごとくに従順にして強暴を御ぐ意あり○病は積気上衝して鬱熱を生じ、気否塞して腹［革に更］満する意あり○［月に隔のこざとへんを省いたもの］［こざとへんに壱のヒを豆としたもの？］の意あり○脹満の意あり

【易学小筌】
この卦は物事塞がり止る意（こころ）あり、又目に見て手にとられぬ象なれば万事急に調いがたし○変卦に大畜を得ば甚だ苦労有と知るべし○住所辛苦あり、又心中に色々思いを含みて気鬱する意あり○物を忌むの意あり○夫婦たがいに安からぬ意○万事取締りなき意○胎孕流産を防ぎ医療を加うべし、或いは胎ならず○病治しがたし○婚姻凶○待ち人来たらず○時至らぬと心得ながく待ちてよし

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10 履

【易学階梯】
履は践なり、礼なり、この卦兌の柔弱をもって乾の剛強に後る、その躬柔弱にして剛強なるものの後へより履みゆけばその道危うくしてかつ難し、然りといえども和説をもってこれに遇うが故に危難を免れて能く履みゆくをなす、ゆえに履と名づく○全体においては一陰五陽に応じ一陰五剛に介る、その履みゆくや危うくしてかつ難し、然りといえども陰よく陽に応じ、柔よく剛に和す、これをもって危難を免れて能く履みゆくをなす、ゆえに履と名づく○乾天高く上に位し兌沢低く下に在り、およそ宇宙の際天より高きはなく沢より低きはなし、今高天上に位して低沢下にあり上下の分これより著明なるはなし、それ上下を分けて尊卑を弁するものは礼の大柄なり、故に履と名づく○乾厳兌和、外厳にして内和するの象あり、それ外厳かなるは礼の貌なり、内和するものは礼の意なり、外厳かに内和して礼の礼用備わる故に履と名づく○乾天兌説天道を説んでこれを履むものは礼の大本なり、ゆえに履と名づく○勤め行う意あり○旅行の意あり○止まり処らざる意あり○危難に遇えどもついに免れ得る意あり○安心せざる意あり○離別の意あり○寡少の意あり○非分の望みをなせば災害に遇う意あり○過不及ある意あり○恭敬にして身の修まる意あり○微弱にして人に虐げらるる意あり○惰弱にして先職の勤まり難き意あり○内柔［りっしんべんに需］にして外剛戻なる意あり○病は下部に温熱ありて逆上する意あり○積気にて鬱熱を生じ留飲ありて胸脇苦満する意あり○大小便快利せざる意あり

【易学小筌】
この卦は礼儀の心あり又進むの義あり、始めは驚くこと有りて後には喜びとなる意あり○身分より大いなる望みを有（もつ）と知るべし○人を恋い慕うの意（こころ）あり○闘（あらそい）を慎むべし○行く者は行きてその所に至り来る者も必ず来てその事に応ず○婚姻調うべし、然れども和し難し○やまい危うし然れども又安きに向かう時あり○遺失出がたし○待事は信あり○胎孕臨産のときに筮し得たるは安しとす、前より占えば驚きあり

△

11 泰

【易学階梯】
泰は通なり、安なり、この卦乾の天気下降し坤の地気上升して陰陽二気相交和すれば萬物咸通す、ゆえに泰と名づく○乾天坤妻に交わり乾君坤臣に和す、夫妻交和すれば宅（いえ）斎（ととの）い、君臣交和すれば国治まる、宅斎い国治まりて天下安泰なり、ゆえに泰と名づく○内乾健にして外坤順なり、内剛健の徳ありて外従順の行いあるものは物これと悖う無くして百事通達す、ゆえに泰と名づく○乾の君子内に居て坤の小人外に在り、君子朝廷に居て政務を司り、小人野外に在りて職事を勤むれば天下の事否塞せずして国家恒に安泰なり、ゆえに泰と名づく○消長においてはもと復より来て臨となり臨より来りて泰となる、陽は君子の道にして陰は小人の道なり、いま泰となりては君子の道長し、小人の道消ず、これをもって天下安泰なるを致す、ゆえに泰と名づく○通ずる意あり○安き意あり○親睦の意あり○和合の意あり○利益の意あり○事の成就する意あり○富饒の意あり○蕃昌（繁盛？）する意あり○懐妊せんとする意あり○驕泰の意あり○怠慢の意もあり○無病なる意あり○病は腹中［革に更］満する意あり

【易学小筌】
この卦は貴人にも吉事とすることあれども常人には凶なり○心中なやみ多く諸事表向きはよく見えて内によろしからず○色情のなやみあり、然れども婚姻には見合わせて用うべし○住居安からず○毎事まちがい有りて苦労あるべし○親子兄弟など総じて身代のことに付いて世話ありと知るべし○願望急には叶いがたし、年久しく過ぎて調うことあらん○病人凶○胎孕安し○遺失出づべし○待ことたよりあり

△

12 否

【易学階梯】
否は塞なり、この卦乾の天気上升し坤の地気下降して陰陽二気相交わらず、二気相交わざれば萬物咸（みな）塞がる、ゆえに否と名づく○乾夫坤妻と交わらず乾君坤臣と和せず夫妻交和せざれば宅斎（ととの）わず、君臣交和せざれば国治まらず、宅斎わず国治まらずして天下咸否塞す、ゆえに否と名づく○内坤柔にして外乾剛なり、内柔弱にして外剛強なるものは人これと和せずして百事否塞す、ゆえに否と名づく○坤の小人内に居りて乾の君子外に在り、小人朝廷に居て権柄を執り、君子野外に退いて賤務を勤むれば事否塞して国家恒に危うし、ゆえに否と名づく○消長においてはもと［女に后］より来りて遯となり、遯より来りて否となる、否はこれ小人の道長じ、君子の道消ず、これをもって天下否塞するを致す、ゆえに否と名づく○塞がる意あり○危うき意あり○親睦せざる意あり○和合せざる意あり○家の有（たも）ちがたき意あり○事の成就せざる意あり○損失の意あり○逼迫の意あり○乖離の意あり○衰微の意あり○外剛くして内柔く、外泰（ゆた）かにして内約（せわ）しき意あり○倹約の意もあり○病身の意あり○病は元気消剥して小腹虚［まだれに需？］し［やまいだれに否］［革に更］強くして逆上甚だしき意あり○血塊ある意あり

【易学小筌】
この卦は物事塞ぎて通せざる義にて思うように成りがたく我より上たる人より咎めにあうことあり、然れども常人には吉とす○始は困（くる）しみ後には栄える卦なれば何ごとも始めには人と合わずして労することあれども終（つい）には志を遂ぐ○夫婦について口舌あるべし○病難つつしむべし、病は凶○胎孕安からず○待ち人来たらず

△

13 同人

【易学階梯】
同人は人と同じうするなり、この卦乾天離火体を合す、天は純陽にして火は太陽なり、蓋し天は上升し火は炎上す、天と火と共に陽物にしてその上るるもまた同じ、ゆえに同人と名づく○乾天離日ともに陽物にしてその西行するやまた同じ、ゆえに同人と名づく○離日乾天の下に在り日の天に在ってその萬国を照らずや同じく、萬国の人もまたそれを仰ぐや同じ、ゆえに同人と名づく○離の智者内に居て乾の勇者外に在り、智者は内に居て事を謀り、勇者は外に在りて事を勤む、それ智勇志を同じうすれば、小にしては国家を安んじ、大にしては天下を平治す、智と勇とはもとより同じうせずんば有べからず、ゆえに同人と名づく○乾夫上に位し離妻下に在り、夫は健やかにして外に勤め、妻は明らかにして内に斎う、夫妻志を同じうしてその家治まり内外致を一にしてその事斎う、夫婦の道はもとより和同せずんば有るべからず、ゆえに同人と名づく○全体においては六二の一陰妻の位に当たりて柔順中正を得て九五に応じ、九五の一陽夫の位に当たりて剛健中正を得て六二に応ず、良夫賢妻に応じ賢妻良夫に和し、夫妻志を同じうして家を斎うるるを致す、ゆえに同人と名づく○全体においては六二の一陰臣の位に当たり文明の主にして柔順中正を得て九五に応じ九五の一陽君の位に当たり剛健中正を得て六二応ず、仁君良臣に泥しみ良臣仁君を輔け、君臣志を同じうして国を治むるるを致す、ゆえに同人と名づく○同じき意あり○人と同心して事を謀れば成就する意あり○子家を継ぐ意あり○智勇相与して功名を成す意あり○親睦の意あり○他に依って発達する意あり○智計多端にして却って散財する意あり○妻女聡明にして能く家を斎うる意あり○妾を畜なうものは寵愛に過ぎて多く失財する意あり○他に慕わるる意あり○病は裏熱烈しうして胸脇苦満する意あり

【易学小筌】
この卦は人心同じくして親しみ深き意の卦なり、ゆえに萬事調いて立身出世あるべしとす○人より取り立てられ幸いあるべし○この卦は正直にして邪曲なき卦なればもし姦佞邪悪の心ある人占い得ば大凶なり○病人凶○胎孕安し○婚姻は平なれども不貞の意あり○待ち人来る○遺失出がたし、早ければ知べし○短気なるを慎むべし

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14 大有

【易学階梯】
大有は有つの大いなるなり、この卦全体においては六五の一陰位に当たりて上下五陽に応じ五陽の臣民相率いて六五の一陰に帰す、寡をもって衆を統べ、柔をもって剛を有つ、これ有つの大いなるものなり、ゆえに大有と名づく○全体においては六五の君は柔中の徳ありて下九二に応じ、九二の臣は剛中の才ありて、上六五を援く、これ君臣徳を合して大有をなす所以なり、ゆえに大有と名づく○離聡明叡智と乾の威厳決断とを合するの象あり、それ聡明叡智に非ざれば前に賊あり後に讒あれどもこれを知る能わず、決断に非ざれば賢を挙げ、不肖を退く能わず、威厳に非ざれば衆を威し民を服する能わず、いま三つのもの皆備わる、能く大有を為すゆえんなり、ゆえに大有と名づく○離の智明と乾の剛健とを合するの象あり、人能く智明の徳ありてその行剛健なれば小にしては家を有ち、大にしては国を有つ、ゆえに大有と名づく○離日乾天の上に在り、日の天上に在るや晋（あまね）く下士を照臨す、これ有つところ大いなる義なり、ゆえに大有と名づく○身を有ち家を有ち財を有つの意あり○衆多の意あり○大いなる意あり○内勇健にして外文明なる意あり○事の明白なる意あり○衆人の帰する意あり○盛んなる意あり○親睦の意あり○仁恕の意あり○力小にして任重き意あり○費用多くに至りて有ちがたき意あり○病は胸［月に隔からこざとへんを省いたもの］に熱ありて心下［やまいだれに否］［革に更］する意あり○秘結上衝の意あり

【易学小筌】
この卦は日の天上に有って照りわたる意にて人の時を得たる卦なり、然れどもこれも位負けのする意あり、満つれば欠ける云如くにて金銀等すべて損失あるべし、又親類朋友或いは婦などすべて人事に付いて苦労する事あるべし○願望叶いがたし○胎孕安からず流産防ぐべし○病凶○失物出づべし○婚姻遅し、外は美しく内はあしき意なり

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15 謙

【易学階梯】
謙は謙譲なり、己を屈して物に下るなり、この卦生卦においてはもと剥より来る、剥は艮山坤地の上に在り、いま来たりて謙となれば、艮山坤地の下に下る、この山高きをもって地の低きに下る、すなわち謙譲の義なり、ゆえに謙と名づく○全体においては九三の一陽剛健の徳ありといえども下に在りて上に進まず、陽の性たるもとより上進すべき者たり、然るにいま艮止の主として下体に止まりて上に出ず、これもまた謙譲の義なり、ゆえに謙と名づく○内艮止にして外坤順なり内篤実の徳ありて道に止まり外従順の行いありて能く人に従う、これもまた謙譲の義なり、ゆえに謙と名づく○謙譲の意あり○軽忽なる意あり○【二文字読み取れず】に骨の混じりたるが如く固僻にして人と和せざる意あり○蟄して見（あらわ）れず屈して伸びざる意あり○零落する意あり○進まざる意あり○多きを損して寡きに益すの意あり○柔順篤実なれども発達せざる意あり○時に順がい止まりて為さざる意あり○苦労する意あり○慎み守りて産業を失わざる意あり○病は疝毒にて腰間疼痛する意あり○類中風にて半身不遂の意あり

【易学小筌】
この卦は先に屈みて後に伸びるの卦なり、故に何事も調いがたく苦労多し、物事不自由なれども後に利事（よきこと）来る○諸事ひかえめにするをよし、又人に従って吉、自身剛気を出せば凶なり○謙は遜とて人に高ぶらず礼譲を云うなり、へりくだると訓す、諂うをなすあらず○婚姻成るべし○胎孕さわりなし○病治しがたし、治るとも長し○待ち人来たらず、至るとも遅し○失物尋ねがたし

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16 予

【易学階梯】
予は悦ぶなり、楽しむなり、この卦生卦においてはもと復より来る、復は震雷坤地の中に在り、今来たりて予となれば、震雷坤地の上に出づ、雷の地に出るや鬱滞屈結の気解散す、すなわちこれ気伸び志遂げて悦び楽しむの義なり、ゆえに予と名づく○坤順震動、順にしてもって動き、動くに順をもってすれば事みな悖り逆らわず功成り志遂げて彼我ともに悦び楽しむを致す、ゆえに予と名づく○上震動にして下坤順なり、上に動けば下順（したが）い、君命ずれば民従うて上下和順し、君臣悦楽す、ゆえに予と名づく○坤の母内に在りて震の長男外に在り、母は老いて室に安んじ、子は強くして出て勉む、母安み子勉めて母子ともに喜び楽しむを致す、ゆえに予と名づく○震の春陽の気行われて震の草木震の地上に生じ、震の蟄蟲坤の地上に出づ、それ春陽の気の行わるるや百穀草木に資してこれを生じ、禽獣蟲魚に資してこれを育す、融和悦楽これより大いなるは無し、ゆえに予と名づく○全体においては九四の一陽宰相の位に当たりて上下五陰に応じ、剛明の才をもって善く天下を都（す）べ督す、これにおいて五陰の君臣はこれに由って安きを楽しみ、一陽の宰相はその志の達するを喜ぶ、ゆえに予と名づく○悦予の意あり○予楽の意あり○［にんべんに失］予（あそびすぎ）の意あり○怠予の意あり○予備の意あり○主は惰弱なれども良宰ありて善く家事を治むる意あり○先には雷霆の轟くが如く名声四方に聞こえて後には跡形もなく消亡する意あり○舞楽の意あり○舞伎軽伎の類都（すべ）て騒がしく賑わしき意あり○故なく出て行方の知れざる意あり○志を達する意あり○病は元気虚弱にして積気上逆する意あり○腹内に塊物ある意あり

【易学小筌】
この卦はよろこぶの義あり、雷地上にふるい出て大いに登るの時なり、人も立身出世の喜びありとす、昔に孔明南蛮を討たんとて筮してこの卦を得、終に勝利を得たり○住居かわることあり、又住所に苦労あり○新規に物を取り組む意あり○怠る心を生ずれば大いに驚くことあるべし○婚姻吉ただし女の家に言（ものいい）あり○病凶また長し○胎孕安からず○失物尋ねがたし○待人来たれども途中障（さわり）あり○迷う意あり

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17 随

【易学階梯】
随は従うなり、この卦震の長男をもって兌の少女に下る、凡そ男は尊く女は卑しく長は先だち少は後るる、然るにいま男をもって女に下り、長をもって少に従う、その従いがたきをもってしかも能く従う、故に随と名づく○震動兌説、彼命じて我勤め、我動いて彼説ぶ、これすなわち我をもって彼に従うの義なり、ゆえに隋と名づく○震動兌悦、悦んで事を勤めるものはすなわち事に随うの義なり、ゆえに随と名づく○震雷兌沢の中に在り、雷激すれば水随って激し、雷動けば水随って動く、これ無心にして激動すれば彼もまた無心にして随順す、ゆえに随と名づく○生卦においてはもと否より来る、否は乾天上にありて坤地下にあり、今来たりて随となれば上九の一陽下りて初九に居る、これ高きより下（ひく）きに下り尊きをもって卑しきに随う、ゆえに隋と名づく○随順する意あり○事に随うて他に心を移さざる意あり○屈服して時を俟つ意あり○龍の淵に潜むが如く後大いに発達する意あり○家僕不信にして懐寶［足に諭のごんべんを省いたもの］垣などする意あり○事無くして安心する意あり○始め肯（うけ）がわざれども強いて求むれば彼肯がう意あり○悦んで勤むる意あり○色情に就いて傷（やぶ）れある意あり○病は留飲ある意あり○疝積ある意あり○湿（？）毒ある意あり

【易学小筌】
この卦は小女の男に従う意あり、我動き彼悦ぶゆえに随うと云う、相互いに随い通ずるの義あり○また枯木重ね茂る卦なれば物の変わりて吉なるべし、住所の変るか、又は故郷を去るか、変じて吉○また隠者などの如く引き篭もるの義あり○人を待、信至る○婚姻成るべし○胎孕障りなし○病凶○失物婦人に求むべし○願望調う○牛馬に物を付けて遠方へ通ずるの意あり○女難を慎み防ぐべし

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18 蠱

【易学階梯】
蠱は壊（やぶ）るなり、惑わすなり、乱すなり、この卦巽の長女をもって艮の少男に下る、これ長女色情をもって少男を惑わし壊るなり、ゆえに蠱と名づく○巽風艮山の下にあり、風の山下にあるや吹き上りて山の草木を壊る、故に蠱と名づく○上艮止にして下巽諛なり、上は止まりて下を恵まず、下は諛（へつら）うて上に忠あらず、上下情乖き君臣意違うて国家ついに壊乱に至る、ゆえに蠱と名づく○生卦においてはもと泰より来る、泰は陰陽交和して事物安泰なり、今来りて蠱となれば上六の一陰下りて初に居り、初九の一陽上りて上に居る、陰下り陽上りて二気交和せず、二気交和せざれば萬物咸（みな）壊（やぶ）る、ゆえに蠱と名づく○壊るる意あり○惑わす意あり○乱す意あり○すでに壊れたるの後、復修に（？）うる意あり○寡婦［女に揺のてへんを省いたもの］奔をもって家を乱す意あり○内より外を壊り下より上を壊る意あり○資財損失する意あり○狐狸妖怪に魅せらるる意あり○臣君を惑わし妾主を溺らす意あり○病は微毒（ばいどく）の意あり○［虫偏に尤］蠱の意あり○積気胸［月へんと隔のこざとへんを省いたもの］に衝き上がる意あり○［月へんと隔のこざとへんを省いたもの］［口へんに壱のヒを豆としたもの］の意あり○傷寒の意あり○中風の意あり

【易学小筌】
この卦は山中に風を含み、吹き出し壊（やぶ）るの意にして、諸事について難義迷惑することあり慎むべし○願望調いがたし、そのほか萬事心に任せず○親子の中に苦労あるべし、また難を慎むべし○争いごとを慎むべし○病重し、また大凶とす○婚姻胎孕諸事凶○常々親しき人に遠ざかる意あり○住所を失う程の事有るべし

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19 臨

【易学階梯】
臨は臨むなり、至るなり、視るなり、この卦全体においては二陽四陰に対し四陰をもって二陽を視る、これ上より下を視るなり、ゆえに臨と名づく○全体においては四陰二陽を望み二陽四陰を望して陰陽相望む、ゆえに臨と名づく○消長においてはもとより坤より来りて復となり、復より来りて臨となる、いま既に臨となりてはその勢い将（まさ）に泰となり大壮となり夬となり乾とならんとす、皆これ陰漸くに退き去りて陽漸くに至り進む、ゆえに臨と名づく○全体においては九二の臣は剛中の才有りて上六五に応じ六五の君は柔中の徳有りて下九二に応ず、二五相応じ君臣相望む卦に在りては和悦順従し爻に在っては陰陽相求み望む、これより切なるはなし、ゆえに臨と名づく○兌悦坤順、悦にして順（した）がう心に悦んで事に順（した）がうものはもとより希望する所あればなり、故に臨と名づく○我兌口をもって説けば、彼坤順にして従う、彼我相望んで和悦順従す、ゆえに兌と名づく○坤の母をもって兌の少女に臨む、母は少女を愛し、少女は母を慕うて、父母相望むるを致す、ゆえに臨と名づく○坤地兌沢の上にあり、地は高く沢は低し、これをもって地上の水は流れて沢中に至る、ゆえに臨と名づく○希望の意あり○相望むの意あり○視る意あり○求むる意あり○相遇う意あり○大いなる意あり○進み至る意あり○漸次に繁栄する意あり○志願の成就する意あり○親和する意あり○人に愛せらるる意あり○我言に人の順がう意あり○病は腹中に宿水ある意あり○［やまいだれに於］血ある意あり

【易学小筌】
この卦は貴賤相交わりて親しむ卦なり、ゆえに物事柔和にして吉、剛気なる事あしく○横合いより難渋など云いかけられ苦労する事あるべし○住所に付き苦労することあるべし、然れども人より取り立てらるることありて安居することを得べし○待ち人来る○失せ物他に持ち去る○胎孕安し○病人凶○婚姻吉

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20 観

【易学階梯】
観は視るなり、示すなり、この卦全体においては二陽四陰に対し四陰二陽をもって二陽を視る、これ下より上を視るなり、ゆえに観と名づく○全体においては二陽四陰に示し、四陰二陽を仰ぐ、四陰の下にありて上を仰ぐはもとこれ二陽上にありてぎょう若として下に示せばなり、ゆえに観と名づく○巽木坤地の上にあり、樹木地上に繁茂すれば、人咸（ことごと）く視る、これゆえに観と名づく○巽風坤地の上に在り、風の地上を行くや遍く庶物に触る、その触るるところを視て風あるを知る、ゆえに観と名づく○視る意あり○所視意あり○示す意あり○時を観、変じて窺う意あり○与うる意あり○大いに衰えたる意あり○外見は好かれども内は空乏なる意あり○敬慎薄ければ災害並び生り、敬慎厚ければ災害を免るる意あり○即今貧しけれども将来繁盛に至る意あり○出奔して再び返らざる意あり○遠行する意あり○教え諭す意あり○病は元気虚損して逆上甚だしき意あり○眩暈の意あり

【易学小筌】
この卦はたいてい吉、然れども晴天に雲の起こる如く、思いもよらぬことども出来し苦労すること有るべし、然れども人に仰ぎ尊ばるるの意ある卦なれば、又外よりよく世話入魂にあずかるべし○また風の地上を吹き上げて行く象あり、萬事に触るの義とす、ゆえに相談等調うべし○また風の行くは物を動揺すれば、人も住所に付いて変動する意もあり○井の中に金ある意にて吉事あれども急には叶いがたし○人にくらまさるるの意あり、人により考え合わすべし○盗賊の類考えべし○女色を慎むべし○始めはよく後にはよからざるの意なり○婚礼調い難し○胎孕なやみ有らん、外邪を防ぐべし○失せ物得がたし○病治りがたし○待ち人来たらんとして来りがたし

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21 噬嗑

【易学階梯】
噬嗑は噛み合わすなり、この卦生卦においてはもと頤より来る、頤はこれ頤口なり、今来りて噬嗑となれば九四の一陽頤口の中に入、一陽はこれ食物なり、食物頤口に入れば必ず噛み令（あわ）すを致す、ゆえに噬嗑と名づく○上離麗にして下震動、上麗にして下動くの象なり、それ頤口の物たる、上あごは頭面に麗（つ）き、下あごは動く、上麗き下動いてもって噛み合わすを致す、ゆえに噬嗑と名づく○故障を解くの意あり○会合の意あり○符号する意あり○是非得失を裁断する意あり○両人論争するを中人となりて双方を宥むる意あり○利害を説く意あり○養う意あり○糊口となる意あり○交易の意あり○闘争の意あり○一人強硬にして上下を隔つる意あり○鶏肋の噛みがたきが如く遂に棄擲する意あり○囚獄の意あり○才知ありて能く勉強する意あり○病は［月へんに齎］傍動悸し心下水気有りて胸熱上衝する意あり○咽喉腫れ塞がる意あり○湿熱にて腫れ物を発する意あり

【易学小筌】
この卦は頤の中に物ある意にして諸事人に隔てらるるの障りあり、然れども噛み合わせて通ずるの義あれば始めにも調いがたくとも後には調うべし○又滝のふちにかくるる勢いあるの卦なれば短気をつつしんで温和にすべし、然らざれば口論争いごと、公事訴訟の障りあり、慎むべし○婚姻成るべし○胎孕平らなれども食物によって障りあり、慎むべし○得失尋ね得べし○病凶に近し○待ち人来る

△

22 賁

【易学階梯】
賁は文なり、飾るなり、この卦生卦においてはもと泰より来る、泰は陰陽区別ありて文飾をなさず、今来りて賁となれば九二の一陽往きて上に居、上六の一陰来りて二に居り、陰陽交錯してもって文飾を成す、ゆえに賁と名づく○生卦においてはもと泰より来る、泰は天地交わるといえども陰陽区別ありて未だ文飾をなさず、今来りて賁となれば九二の一陽上りて上に居り上六の一陰下りて二に居る、九二上りて上に在るは天文なり、上六下りて二に居るは地文なり、陽上り陰下り陰陽交々（こもごも）錯（まじ）わりてもって文飾を成す、ゆえに賁と名づく○離明艮止、文明にしてもって道に止まるは人文なり、その謂う所の道に止まるとは、為仁君止於仁、為人臣止於敬、為人子止於孝、為人［役からぎょうにんべんを省いたもの、父？］止於慈、与国人交止於信の類これなり、ゆえに賁と名づく○離の文明艮の篤実を兼ねたり、躬文明有りて且つ篤実の行い有るは君子の賁なり、故に賁と名づく○離日艮山に没し、離火艮山の下に在り、日山に没すれば、すなわち夜なり、中夜火を山下に挙げれば火光樹木に映して彩色鮮明なり、ゆえに賁と名づく○文飾の意あり○色荘の意あり○偽りかざる意あり○口中に物を含むが如き意あり○獄中の囚となる意あり○事を為すか為さざるかには止めて為さざるが利ろしき意あり○智慮ありて篤実なる意あり○夜陰の意あり○墳墓の意あり○外華美にして内困窮する意あり○伏蔵する意あり○人と和せざる意あり○病は下部に湿熱ある意あり○積気ありて不食し大便熱秘する意あり

【易学小筌】
この卦は虎の林を出でて遊ぶの象なり、物のうるわしく又威あるの意なり○立身出世あるべし○住所を改るによし、旅行吉○家居衣類器物に至るまで見事に飾るの意あり○まちがいにて人と中絶する事有るべし○後に宜しとす○短気をつつしむべし○求むること叶う、滞りて急に調いがたき意あり○身分より大きなる事を欲すればかならず損あり、小なるによろし○婚姻なるべし、但し末を遂げず○胎孕安からず○病危うし○遺失ありちかくたずねべし○待つことにたよりあり、遠国ならはなはだおそし

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23 剥

【易学階梯】
剥は削るなり、尽きるなり、落ちるなり、この卦消長においてはもと乾より来りて姤となり、姤より来りて遯となり、遯より来りて否となり、否より来りて観となり、観より来りて剥となる、いますでに剥となりてはその勢い将に坤とならんとす、皆これ陰陽を消じ、陽陰に削るせらる、ゆえに剥と名づく○全体においては一陽の君子高く上に位し、衆陰の小人下に阿［賞の貝を黒］してまさに君子を剥落せんとす、故に剥と名づく○坤柔艮狼、内柔弱にして業に処（おる）能わず、外狼戻にして人と和するを得ざるものはその身将に剥落せんとす、ゆえに剥と名づく○艮山夷して坤地に付き高山落ちて平地となる故に剥と名づく○艮山坤地の上に有る時は年月を歴（へ）て一雨一雨に漸々と剥落するものなり、ゆえに剥と名づく○艮止坤柔上は止まりて下を恵まず下は柔弱にして上に奉せず、これをもって国家終に剥尽す、ゆえに剥と名づく○削らるる意あり○落ちる意あり○尽きる意あり○零落する意あり○砥の金を減らし［二文字読めず、本賊、とぐさ？］の木を削るが如く、資財の稍々に消亡する意あり○進んで事を作すに利ろしからず退き守りて利ろしき意あり○外見は好けれども内空乏なる意あり○［りっしんべんに需］弱狼戻にして身を有つ能わざる意あり○山に樹木なきが如く位のみ高くして禄なき意あり○仰ぎ観らるる意あり○物に執着する意あり○隠遁の意あり○病は必死の意あり

【易学小筌】
この卦は枯木の栄花を発するの卦なれば今より新規に物をとり始むるによろし、然れどももの高きところより落ちたる象あれば人も身の上の安堵ならず、たとえば浪人者［平仮名読めず］との意に似たり○時に［平仮名読めず］たかうに止まるの義あればすみやかにすること皆あしし、もの事料見違いして事をやぶるの意あればよくよく慎むべし○人に邪魔を入れらるることあり○この方よりむこうへ物をしかけることは凶○人の他より来る意あり、来るものは行き去るの意あり○時をうしない思慮分別定まらざる意あり○末は吉なり○婚礼凶○病凶○胎孕凶、臨産におよんで筮せば安しとすることあり、但し母はあやうし○遺失出がたし○まち人信（たより）あり

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24 復

【易学階梯】
復は反（かえ）るなり、この卦消長においてはもと乾より来りて姤となり、姤より来りて遯となり、遯より来りて否となり、否より来りて観となり、観より来りて剥となり、剥より来りて坤となり、坤より来りて復となる、これに至りて乾の一陽再び復り来る、ゆえに復と名づく○上坤順下震動、これ上は従順の徳をもって下に臨み、下は能く勉めて上に奉願す、これ道再び天下に復ればなり、ゆえに復と名づく○消長においてはまた将に復は臨となり泰となり大壮となり夬となりてついに乾に復らんとす、ゆえに復と名づく○生卦においてはもと剥より来る、剥と復とは恒に相往来す、復の一陽上ればすなわち剥となり、下ればすなわち復となる、これその一陽ふたたびその初めに復る、ゆえに復と名づく○震雷坤地の下に在り、雷もとより地中の物に非ず、後かならず発出して天に復らんとす、ゆえに復と名づく○復る意あり○往来する意あり○進む意あり○事を作すに利ろしき意あり○過ちを改むる意あり○立身発達する意あり○質素なる意あり○英雄久しく人の下に屈せざる意あり○蟄伏する意あり○相遇う意あり○求むる意あり○一人衆人を統べて事を建てんとする意あり○故障なき意あり○病は即今危篤なれども漸々快復に向かう意あり

【易学小筌】
この卦は物つきて又始まるの卦なれば一度はあしくともまたよき事にむかう時節にして諸事思う処を成就すべし○又この卦は天より寶をたまうの卦なれば願望成就す○婚礼養子の類吉、ただし二度目の縁かまたは二度の相談にて遂ぐべし○住所苦労ありしかれ共久しからず○やまいは治すべし○胎孕はすこしなやみの意あり○うせもの有るべし○待ち人きたる○短気をつつしむべし

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25 无妄

【易学階梯】
无妄は妄假無きなり、妄とは無きをもって有とし、有をもって無とす、妄視妄聴妄言妄動の妄これなり、蓋し人一点の妄假なければ天人合一にして至真至誠なり、この卦乾天震動、体を合す、これすなわち天道運行の象なり、蓋し天道の運行するや四時行われ百物成る、咸（みな）これ自然の妙用にして真誠无妄なり、ゆえに无妄と名づく○震雷乾天の下に在り、雷の天下を行くや縦横無碍なれども動くに意なくして動くはすなわち无妄なり、ゆえに无妄と名づく○震動をもって乾天に対す、動くに天をもってし、動きを天と合すれば、糸毫の妄假なくして真誠无妄なり、ゆえに无妄と名づく○生卦においてはもと否より来る、否はこれ天地なり、いま初九一陽否の上爻の外より来りて成卦の主となる、その成卦の主となるものは人、人天に［凛からにすいを省く］る処の性にして、禅にいわゆる主人公というものこれなり、性はすなわち真誠无妄にして一点の妄假なし、ゆえに无妄と名づく○妄假なき意あり○真誠の意あり○正直なる意あり○誠なき意もあり○正しからざる意もあり○妄動してわざわいに罹る意あり○蒙昧なる意あり○望み多き意あり○災いに遇う意もあり○天より押さえらるるが如き意もあり○薄命なる意もあり○病は積気ありて胸脇苦満し心下［やまいだれに否］［革に更］する意あり○不食する意あり○頭眩する意あり

【易学小筌】
この卦は天理にしたがうて動くの義によって无妄と名づく、みたるる事なきは誠なり、誠にして凶なることはなし、然れども当世の俗、誠を保ち慎む人はすくなし、故にこの卦を得る人は過半は凶なりとす○また石中に玉をつつむの卦なれば諸願叶いがたし、時至らざると知るべし○忠孝のこと、また仏神のことは吉とし、又他人のためにして己が欲にせざることにはまた吉とす○迷うて多く仕損ずること有り○思うこと通じがたし、強いてすればかえりて災いをうくべし○病人先にあやうく後に安き意あり○婚礼成るべし、但し物を遅滞すべし○胎孕あるいは驚きありとも終にはさわりなし○待こと信（たよ）りあり

△

26 大畜

【易学階梯】
大畜は大いに止むるなり、大いに養うなり、大いに蓄うなり、この卦艮の制止をもって乾の鋭進を止む、下剛強にして非度をなすを上より法制を出してこれを止め、君をもって民を制し、上をもって下を止む、ゆえに大畜と名づく○全体においては六五の君と六四の宰相と志を合せ、下民の剛強にして鋭進するものは止む、蓋し陽の性は進み陰の性は退く、乾の三陽は進み、四五の二陰は止む、六四の宰相一人をもって上下を止むるを小畜と云い、四五の君臣力をあわして下民を止むるを大畜と云う、いま六五の君と六四の宰相と心を同じうし力を共にして大いに下民の鋭進するものを止む、ゆえに大畜と名づく○健乾艮止、健にして能く勉め、然してその道に止る時はすなわちこれ道を身に集め蓄え止めるる大なり、ゆえに大畜と名づく○乾の剛健をもって艮止の篤実を兼ねたり、人能く剛健にしてかつ篤実なればその道日に進んでその徳を養うや大なり、ゆえに大畜と名づく○生卦においてはもと泰より来る、上九の一陽泰の下より上りて上に居て成卦の主となり、六五王者の師となりてその君に教え、大いにその非を止めてもってその徳を養わしむ、ゆえに大畜と名づく○乾天艮山の中に在り、山の小なるをもって天の大いなるものを蔵む、これ小をもって大を蓄うるなり、ゆえに大畜と名づく○畜止の意あり○制止せらるる意あり○止息の意あり○蓄畜（たくわえる）の意あり○畜養の意あり○畜集の意あり○止まり処（お）る意あり○仕官の意あり○大志を懐く意あり○博識なる意あり○剛健にして篤実なる意あり○財の集まる意あり○官法を犯して［うえに生したに月］（せい）に遇う意あり○時の至るを俟て志を達する意あり○拒み争う意あり○病は両便不利して腹満する意あり

【易学小筌】
この卦は龍の山中に潜居（かくれい）てふるい起こらんとするの卦なり、故に人も住居につき望事苦労ありと知るべし○物に忌み嫌いあり、又おそるる意あり○物のあつまり増す意あれども又破るの障りあり○奉公するには吉○争いごとありて定まらざる意なり○人物は性急なる生まれにしてことを失うべし○婚礼よろしからず○胎孕おそし○病重し○遺失尋ねがたし、出るともおそし○待ち人来たらず

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27 頤

【易学階梯】
頤は口なり、飲食は口より入り、言語は口より出で、生を養い身を有つ所以もとなり、この卦全体においては外実内虚にして口を開きたる画象なり、ゆえに頤と名づく○全体においては上九一陽の上顎に四五二陰の上歯あり、初九一陽の下顎に二三二陰の下歯あるの画象なり、故に頤と名づく○上艮止にして下震動なり、上顎は頭面に著（つい）て止まり下顎は動いて物を食む、これ頤口の用なり、故に頤と名づく○養う意あり○産業の意あり○飲食を節にして身を養い言語を慎んで身を保つ意あり○二人相争う意あり○人と共和して事を作せば成就する意あり○相遇うの意あり○両人立別れて事を成す意あり○兄弟心を一にして業を修むる意あり○父命じて子能く勤むるの意あり○父子業を勤めて家族を養う意あり○才能ありて篤実なる意あり○病は気塞がりて食進まざる意あり○養生を善くすれば快復に至る意あり

【易学小筌】
この卦は養うの義にして物の成就する卦なれどもしかし時節のいまだはやき意あり、急にすることはよろしからず○またこの卦はさわがしき意あり故に公事口舌女難等を慎むべし○心中に思いありて人に忍ぶ意あり○人多くあつまる意あり○婚礼なるべし、然れども終に和し難し○失せ物ものの中に混ずるなるべし○胎孕安し○病は凶兆○待人来がたし

△

28 大過

【易学階梯】
大過は大いに過ぎるなり、この卦全体においては四陽内に在りて二陰外に在り、内は主にして外は客なり、陽は強くして陰は弱し、いま主の強きもの大いに客の弱きものに過ぎたり、ゆえに大過と名づく○巽木兌沢の中に在り、水もと木を養うものたりといえども沢水樹木を［さんずいに函］し入ればその養い大いに過ぎてその木却って枯稿す、ゆえに大過と名づく○兌悦巽従、悦んで従う、それ心に悦ぶといえども身従わざれば事成らず、身従うといえども心に悦ばざれば功遂げず、今悦んでかつ従うその道大いに過ぎるあり、ゆえに大過と名づく○兌の少女上に位し、巽の長女下に在り、少女をもって言えば凌ぐに過ぎ、長女をもって言えば譲るに過ぎたり、少をもって長を凌ぎ、長をもって少に譲る、ともに大いに過ぎたりとす、ゆえに大過と名づく○大いに過ぎる意あり○過失ある意あり○過不及ある意あり○違覆（まちがい）の意あり○［読めず］延の意あり○家務身分に過ぎ勝（た）えがたき意あり○費用多くして転覆に至らんとする意あり○俊傑独立の意あり○相背く意あり○不遜に過ぐるか謙譲に過るかの意あり○事物不相応にしてかえって用を成す意あり○身は相従えども情は相乖く意あり○病は脹満の意あり○中風の意あり

【易学小筌】
この卦は棟たわむの象なり、上ずることならず下載ることならず、中に迷うの意なり、ゆえに何事も不定にして思慮安からず○我思う処を強く行い、人の相談を用いずして後おおいに了簡違いて難渋することあるべし、つつしむべし○表向きはよろしく跡のなき意あり○はじめ苦労あって久しくして後さかゆる意もあり○物事不順なるべし○婦人の病は月のもの滞ること多し○人と組合いする事はよろし○婚姻よろしからず○胎孕なやみあり○遺失出がたし○待ち人来たらず○すべて進む事宜しからず

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29 坎

【易学階梯】
坎は陥るなり、険（なやむ）なり、一陽二陰の間に陥る、陥れば必ず険むるあり、坎はもと八卦の名なり、この卦重坎ゆえにまた坎と名づく○陥る意あり○険む意あり○溺るる意あり○下がる意あり○君臣和せずしてともに険む意あり○一家勢と二つに分かれて斎（ととの）い難き意あり○誠ある意あり○仁慈の意あり○愛執の意あり○多欲なる意あり○愚昧の意あり○伏蔵の意あり○姦計の意あり○盗賊の意もあり○誠ありてつとむれば志を達する意あり○一心に神明を祈れば感応ある意あり○二つに分かれて険みあるを一つに約めて険み亡（なく）なる意あり○時においては冬とする意あり○病は疼痛の意あり○病勢危篤なるあり

【易学小筌】
この卦は難義困窮の卦なり、遠く住所を去りて吉○常にかわる怪しき意ありと知るべし、病は難病不治の症○胎孕安かるべし○婚姻あしく○遺失むなし○願望叶いがたし○人の二人連れ立ち行く意あり、又駆け落ちもの、あるいは故なくして出て帰らざる人の類にいずる卦なり、後には居所も知るべし○人に隠るる意あり○住所を離るる程の苦労あるべし○物に錠前などある意あり○次第しだいに進む意あり○思いよらず華美なるの意あり○色情あり○老夫老婦の婚に吉なり、その外婚礼は見合わせて可なり

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30 離

【易学階梯】
離は麗なり、一陰二陽に麗く、離はもと八卦の名なり、この卦重離ゆえにまた離と名づく○麗（つ）く意あり○明なる意あり○知恵とする意あり○上る意あり○明らかなる人に付いて身を修むる意あり○父子相続いて家を修むる意あり○［読めず］延する意あり○智計を好んで却って身の修まらざる意もあり○淳直にして事を作せば福多き意あり○邪智を用いて事を敗（やぶ）り身を亡ぼすの意もあり○是非の心勝って親和せざる意もあり○疑惑の意もあり○心志定まらずして物に移り易き意もあり○性急なる意あり○多智にして薄福なる意もあり○美麗意なるあり○顕著なる意あり○日を重ねて久しき意あり○時においては夏となる意あり○病は大熱の意あり○両乳熱ありて痛み内の腐る意あり

【易学小筌】
この卦は離別の卦なれば親子兄弟あるいは親しき朋友などに別れ遠ざかるなり、然れども学者出家などには吉とす、おおいに用いられて名を発することあるべし○常人には大抵よろしからず、住所を退くほどの辛苦あるべし○罪をうけ咎にあうことあり、慎むべし○女難あり○金銀財寶につき損失あり○口舌ことうれい事あり○婚礼養子調いがたし、調うともよろしからず○胎孕安からず○病は凶兆とす、但し急病などはかつ生の意あり考え合わせてだんすべし○失物遅ければ空し○またこの卦は先に凶にして後利ろしきの儀あれば物に依って吉とする意あり考え合わせて断ずべし

△

31 咸

【易学階梯】
咸は感なり、この卦兌沢上にあり艮山下にあり、山は陽にして沢は陰なり、陽は陰に感じ陰は陽に応ず、山気の下降するは山沢感ずるなり、山沢交感して二気相通ず、ゆえに咸と名づく○兌の少女上にありて艮の少男下にあり、少男の下にあるはこれ少女に感ずるなり、少女の上にあるはこれ少男に応ずるなり、すべて男女の相感ずる、少男少女に如（し）くはなし、いま二少相感ずるを致す、ゆえに咸と名づく○生卦においてはもと否より来る、否はこれ天地なり、いま上九の一陽下がりて三に居す、天気の地気に感ずるなり、六三の一陰上りて上に居るは地気の天に応ずるなり、天気下りて地に感じ、地気上りて天に応じ、天地感応して二気相交わる、ゆえに咸と名づく○兌悦艮止、悦んで止る、心悦んでその物に止まるはすなわち感なり、ゆえに咸と名づく○感ずる意あり○感応ある意あり○相通ずる意あり○応対においては相背く意あり○速やかなる意あり○心の移り易き意あり○親和する意あり○懐妊する意あり○己れを虚しうして教えを受くる意あり○事に触れて発意する意あり○悦んで能く守る意あり○病は脹満の意あり○留飲の意あり○小児なれば痘瘡麻疹の意あり

【易学小筌】
この卦は咸通とても速やかに調うの卦なり、思わざる吉事あると知るべし○婚姻養子大吉○胎孕平安○病危うし○遺失尋ね得べし○願望万事向こうより親切に世話して我おもう事遂ぐべし○遠方より便宜ある意なり○色情のなやみあり○病人大抵凶とすべし○他国遠行には行きて帰らざるの意あり

△

32 恒

【易学階梯】
常は久なり、この卦震雷上に在りて巽風下に在り、雷は陽気の動くなり、風は陰気の動くなり、二気運動すれば日月運行し日月運行すれば四時変化す、四時変化すれば天地萬物みな長久なり、これ能く変化するをもって長久なるを致す、ゆえに恒と名づく○生卦においてはもと泰より来る、泰は天地の相交われるなり、いま初九の一陽上りて四に居、六四の一陰下りて初に居り、陽上陰下りて二気相交わらず、二気相交わればすなわち通じ、二気相交じらざればすなわち変ず、およそ天地の道は変通するをもって能く久しきを致す、ゆえに恒と名づく○震の長男上に在りて巽の長女下に在り、夫は上に位し妻は下に居り、夫は外に出て動き妻は内に居て斎（とと）のう、すなわちこれ夫婦室を有つの象なり、それ夫婦は天地に［判読できず］して人倫始めたり、夫婦有りて後に子孫生生して已まず、これ人倫の道の長久に已めざるゆえんなり、ゆえに恒と名づく○巽従震動、従うて動く事に従うて且つ止まざるものはすなわち長久の道なり、ゆえに恒と名づく○久しき意あり○変化の意あり○形跡（あとかた）もなく消亡する意あり○繁栄の意あり○憤激する意あり○乖き違うの意あり○勤めて倦まざる意あり○升進する意あり○［馬へんに亥］（おど）ろき懼るる意あり○［読めず］延の意あり○功成り志遂げる意あり○相続する意あり○病は久［やまいだれに阿］［やまいだれに固］疾の意あり○積気の意あり○脹満の意あり

【易学小筌】
この卦は物の成長する儀あり、また物の散失するの意あれば人事もまたかくの如し、集まると散り、散ると思えばまた集まりて定まらぬ意あり○住所に付き苦労あるべし○萬事につき一分の了簡をもってすること宜しからず○新たに物を取りわしむること宜しからず○吉凶とも久しくして後替る卦なれば急にすること皆災いと知るべし○病安からず○婚姻なるべし○胎孕半吉○失物出がたし○待ち人来る○願望かないがたし

△

33 遯

【易学階梯】
遯は遁（のがる）なり、この卦消長においてはもと乾より来りて姤となり、姤より来りて遯となる、いますでに遯となりてはその勢い将に否となり観となり剥となり坤とならんとす、皆これ陰ようやくに進み至りて陽漸くに退き逃る、ゆえに遯と名づく○乾天艮山の上に在り、山は下に在りて止まりて動かず、天は上に在りて上りて息（や）まず、これ天気上行して山獄を遯れ去るなり、ゆえに遯と名づく○乾健前に在りて艮止後にあり、前なる者は健やかにして進み、後なる者は止まりて行かず、一は止まりて一は進む、これ止まる者はその所に止まりて進む者はその所を遯れ去るなり、ゆえに遯と名づく○艮の少男後に止まりて乾の老父前に進む、少男は齢の少なるをもって久しく世に止まり、老夫は齢の長ぜるをもって速く世を遯る、ゆえに遯と名づく○乾賢艮山に在り、これ賢者世を遯れて山に隠るるの象なり、故に遯と名づく○遯るる意あり○退く意あり○出奔する意あり○官を辞して遯れ去る意あり○家道衰えて畜財減損する意あり○借財の漸くに増す意あり○主家の財を狂費する意あり○盗臣財を掠むる意あり○利を追うて事に係がれば災［うえに生したに月］に遇う意あり○病は元気漸くに虚損する意あり○上熱し下冷めて生穀下利する意あり○胸脇苦満心下［やまいだれに否］［革へんに更］し小腹虚［にくづきに需］して上逆する意あり

【易学小筌】
この卦は退くと訓（よ）む字にて住所などに付きて辛苦多く、思慮分別も定まらず、諸事間違いのある卦なり○願望は邪魔するものありて調いがたし○そねみそしらるることあり○物事成就の如く見えて皆調いがたし、却って損耗または難儀することあり○即時の軽きことには用いるも可なり○病人半吉なれども変卦によって吉凶を定むべし○婚姻成らず、成るとも凶○胎孕障りあり○失物空し○待ち人来たらず○他所より故郷に帰るは吉

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34 大壮

【易学階梯】
大壮は大いに盛んなるなり、この卦全体においては四陽をもって二陰に対す、陽はもとより強大にして陰はもとより弱小なり、いま強大なるもの弱小なるものに倍してその勢い大いに壮盛なり、ゆえに大壮と名づく○消長においてはもと復より来りて臨となり、臨より来りて泰となり、泰より来りて大壮となる、いますでに大壮となりてはその勢い将に夬となり乾となりて純陽壮盛に至らんとす、ゆえに大壮と名づく○乾剛震動至剛にして能く動く、ゆえに大壮と名づく○乾の父内に居て震の長男外に在り、老いたる者内に居て謀り、壮（さか）んなるもの外に出て行えばその事大いに盛んなり、故に大壮と名づく○震雷乾天の上にあり、雷の天上にあるやその奮う、大いに壮んなり、ゆえに大壮と名づく○壮盛なる意あり○上り進む意あり○家富み財盈ちて大いに繁盛する意あり○臣君を犯し子父を凌ぐ意もあり○剛力にして勇気ある意あり○非力にして気のみ剛（つよ）き意もあり○人を慢（あなど）り他を［網の糸を省いたもの］る意もあり○驕奢の意もあり○強暴なる意もあり○勉強して怠らざる意あり○猥（みだ）りに進んで事を過（あやま）つ意もあり○病は脚気衝心の意あり○病の重き意もあり

【易学小筌】
この卦は陽の盛んに長ずるの卦なれど諸事過ち有りて苦労難儀にあうべし、或いは住所を離れ安からぬことあるべし○無理非道をいうて勢い強き人のために辛苦することあるべし○金銀財寶に付き苦労あり○宜しく見ゆる事ありとも調うべからず○短慮なるを慎むべし○何事も調いがたく後には自然よろしき意あり○物を騒動する意○婚姻よろしからず○病人凶多しとす○胎孕安からず○失物尋ねがたし○待ち人来たらず

△

35 晋

【易学階梯】
晋は進むなり、この卦生卦においてはもと明夷より来る、明夷は離日坤地の下に在り、いま来りて晋となれば、離日坤地の上に出ず、これ日の地下より地上に進み升るの象なり、ゆえに晋と名づく○生卦においてはもと否より来る、否はこれ君臣相交わらず、上下相通ぜずして、天下否塞す、今来りて晋となれば六五の一陰否の初六の下より進み上りて五に居り君位に当たりて中を得、かつ離明の主として天下の臣民を統ぶ、猶日の地上に在りて萬国を照らすが如し、蓋しこれ六五の一陰下より進み升りて天位に至ればなり、故に晋と名づく○離明上に在りて坤順下に在り、己れ柔順にして文明の人に麗（つ）き従えばその道の升進す、ゆえに晋と名づく○進む意あり○明らかなる意あり○上に名君ありて下順従する意あり○宰相権柄を執りて上下の情を通ぜざらしめざる意あり○官位升進の意あり○声名四方に聞こゆるの意あり○立身してその後復（また）零落する意もあり○時においては日の出とし、日中とし、また只尽日とする意あり。○外華美にして内虚乏なる意あり○人に依付して事を作せば志達する意あり○発明なれども［りっしんべんに需］弱なる意あり○病人は発熱上衝する意あり○胸［にくづきに隔からこさとへんを省いたもの］煩熱し心下［やまいだれに否］［革に更］して小腹空虚なる意あり

【易学小筌】
この卦は朝日の登る象有りて次第しだいに繁盛して立身出世に趣く意あり、また人より親しみ敬われ上たる人より恵みにあずかる卦なり○住所の替わる意あり、たとえ住居は移り替わることなくとも身代の事につき今までと異なる意、吉事なるべし○願望叶うべし、すこし遅し○久しく中絶したる人にあうをあるべし○又中あしき人と中なおる意あり○物目だつ意あり○病人凶○婚姻なる○胎孕平○失せ物遠く持ち去るべし○待つこと信あり○隠悪の人この卦を得ば大凶

△

36 明夷

【易学階梯】
明夷は明らかなるものの傷（やぶ）るるなり、この卦生卦においてはもと晋より来る、晋は離日坤地の上に在り、いま来りて明夷となれば離日坤地の下に入る、日地の下に入ればすなわち暗し、これ明らかなるものの傷れ毀（そこな）うなり、ゆえに明夷と名づく○上坤暗にして下離明なり、己れ文明の徳ありといえども上昏暗にしてこれを晦まし傷る、ゆえに明夷と名づく○内離明にして外坤順なり、内文明の徳ありといえども外柔順にして自ずからその明を晦ます、ゆえに明夷と名づく○坤の瓦器をもって離の燈火を蔽うの象あり、燈を瓶内に入ればその明の傷る、ゆえに明夷と名づく○傷るる意あり○晦まさるる意あり○欺かるる意あり○暗昧なる意あり○迷い惑う意あり○智を晦まし能を蔵（かく）せば災いを免るる意あり○火災の意あり○盗難の意あり○逼塞する意あり○出奔するものは初め北方へ行きてのち東方へ赴く意あり○故なくして家を出るものは多く発狂して死する意あり○故有りて外に出るものは北方に隠るる意あり○誅戮の意あり○病は胃熱の意あり○発狂の意あり○大病なれば死する意あり

【易学小筌】
この卦は日の地中に入りて分明ならざるの意あり、ゆえに人も思う処をうしない難義迷惑することあるべし、夷は破ると訓（よむ）字にて仕損じある意に通じ何事もつつしむべし、しかれどもはじめ困窮して後に栄花するの卦なれば終には立身出世とす○思いよらぬ女難を受くることあり、慎むべし○人と音信を隔つることあり、この時に当たって利口才智を出し願望を起こし立身出世を思わば却って災いを受くべし、知恵を出さず時をまつべし○仕官によろしからず○婚姻口舌あり○胎孕安し○病危うし○失せ物得がたし○待つ事信なし

△

37 家人

【易学階梯】
家人は室家の人なり、およそ斎家の道男は外に出でて職事を勤め、女は内に居て中饋を主（つかさ）どる、ゆえに妻を釈して室家と云う、この卦巽の長女上に居、離の中女下に在りて、上下みな婦女たり、ゆえに家人と名づく○全体においては六四の一陰長女の主として正を得て上に位し、六二の一陰中女の主として中正を得て下に位す、婦女序ありてかつ正しければその家能く斎（とと）のう、ゆえに家人と名づく○全体においては九五の一陽夫の位に在りて中正を得、六二の一陰妻の位に居てまた中正を得たり、夫婦中正を得て家を治むれば家道正しうしてその家能く治まるるあり、ゆえに家人と名づく○内離明にして外巽順なり、内智明ありて能く情偽を察し、外温順にして仁恕を用ゆれば上下親和してその家能く斎のう、ゆえに家人と名づく○室家の意あり○家を有つ意あり○家を興す意あり○家業とする意あり○家督とする意あり○居るか出るかには家に居って利ろしき意あり○夫婦和せざる意あり○火災の意あり○分に安んじて外を願わざる意あり○外に依って身を立てる意あり○人と和せざる意あり○故障多き意あり○散財の意あり○病は腰間に湿熱ある意あり○積気にて欝熱ある意あり

【易学小筌】
この卦は家内安寧するの卦なり、萬事によること婦女をもってすれば吉なり○婚姻吉○胎孕障りなし○病重く危うし○失せ物出ずべし○待ち人来たらず○家事の世話あるべし、又立身名利の望みあるべし○願望遅し○壮若（わかい）人は色情のなやみあり○始めは物事心に任せがたく見ゆるとも人より親しみを得てぜんぜんよろし

△

38 睽

【易学階梯】
睽は乖（そむく）なり、この卦生卦においてはもと革より来る、革は兌沢上に在りて離火下に在り、今来りて睽となれば離火動いて下より上に上り兌沢動いて上より下に下り、火は動いて上り水は動いて下りて水火交相睽（そむ）く、ゆえに睽と名づく○離火上に在りて兌水下に在り火はもと炎上の物にして上に在りて益々上り、水はもと潤下の物にて下に在りて益々下り火は上り水は下りて水火相乖き離る、ゆえに睽と名づく○離の中女上に在りて兌の少女下に在り姉妹同じく父母の家に育（やしな）わるといえどもその嫁ぐところ各々異なるをもってその志もまた同じく行われず、これもまた乖き離るるの義なり、ゆえに睽と名づく○乖き違う意あり○乖き離るる意あり○乖いて用を為す意あり○異変なる意あり○憎み嫌う意あり○遁世の意あり○明らかなる人に就いて事を謀れば成就する意あり○大事は成らざる意あり○過失ある意あり○病は胸［にくづきに隔のこざとへんを省いたもの］に停毒ありて熱を生ず意あり○痰飲の意あり○湿熱上衝して口中の痛む意あり○留飲にて逆上する意あり

【易学小筌】
この卦は人心相そむき違うて事を成しがたし、然れども学者などには時として大吉ありとす、かくのごとき事は予が述作の古易断と云う書にあり○女難あり○争論口舌を慎むべし○そねみ妬まるる意あり○心中辛苦多くまた財寶散乱することあり○人と中絶の意あり○欺き偽さるる事なりと知るべし○行く者は帰らず、然れども音信あるべし○小事には吉悦の意あり○婦人を占うてこの卦を得ば大凶、その女企みあり、或いはいん婦姦曲なるべし○婚姻口舌の兆○胎孕障りなし○病治すべし○うせもの得がたし○待ち人来たらず

△

39 蹇

【易学階梯】
蹇は難なり、この卦上下をもって見れば坎険上に在りて艮止下に在り、これ険中に止まり居て険（なや）みを出る能わざるの象なり、また前後をもって見れば坎険前に在りて艮止後に在り、これ険み前に在りてその後ろに止まり敢えて進む能わざるの象なり、二つのもの皆険みを免るる能わずしてともにその険みに止まる、ゆえに蹇と名づく○坎水前に在りて艮山後ろに在り、進まんと欲すれば前に水あり、退かんと欲すれば後ろに山あり、前後皆険みありて進退［援のてへんを省いたもの］にきわまる、ゆえに蹇と名づく○坎水艮山の上に在り、水山上に在れば必ず流れ下る、その下るや石に支えられ木に裂れて七断八裁するものはすなわち難みなり、ゆえに蹇と名づく○坎水前に険にして艮山後ろに阻なり、山川険阻の地は行旅［援のてへんを省いたもの］難む、ゆえに蹇と名づく○全体においては九五一陽君位に在りといえども坎険の主にして険みに陥り九三の一陽は剛強にして威厳強くかつ艮止の主にして内卦の上に止りて九五に朝せず、いわんやまた六四の宰相は陰柔不才にして却って九三に比し六二は王臣蹇蹇たれども九三に隔てられて九五を輔（たすけ）る能わず、天下二主に分かれて勢い二つに裂く、実にこれ蹇難危急の候なり、ゆえに蹇と名づく○艮人坎穴の中に陥り止まるの象あり、人過って陥穽の中に陥り容易に出る能わざるものは難みなり、ゆえに蹇と名づく○難渋の意あり○深泥の中に陥るが如く、進むも退くもならざる意あり○家内区々（まちまち）となりて和せざる意あり○主は愛に溺れ臣は偏固にして家の治まりがたき意あり○溺死の意あり○奔るものは遠く行かざる意あり○旅行は川に遇うて止めらる意あり○慎み守りて険に陥らざる意あり○君父親族の為に艱み苦しむ意あり○両（ふた）つに分かれて艱む有を一つに合して難みの亡なる意あり○奸計に陥る意あり○病は胃熱上衝して腕の痛む意あり○遺毒にて身体屈んで伸びざる意あり○湿熱の意あり

【易学小筌】
この卦は龍の玉を失う意にして寶散財、貧にして辛苦あり、悩み甚だしきの卦なり○住所苦労あり、物事窮屈なる意あり○また険を見て止まるの卦なれば大凶なり、人に従うて吉○旅行の志あるべし、人に随って行うもよろし○病人重し、或いは腰下の病あり○胎孕安からず○婚礼ならず○待ち人来たらず○願望調いがたし、然れどもよろし

△

40 解

【易学階梯】
解は脱（とく）なり、この卦生卦においてはもと屯より来る、屯は震動坎険の中に在りていまだ険（なや）みを出る能わず、いま来りて解となれば震動坎険の外に在り、動いてもって険（なや）みを出、出てもって険みを免がる、これすなわち難みを解き脱くの義なり、ゆえに解と名づく○生卦においてはもと屯より来る、屯は坎雲上に在りていまだ雨とならず震雷下に在りていまだ発せず、今来りて解となれば震雷上に発し坎雲雨となりて雷雨作りて天地鬱結の気解け萬物みなその難みを解く、ゆえに解と名づく○生卦においてはもと屯より来る、屯は震動坎水の後に在り、動いていまだ水を渉るを得ず、いま来りて解となれば震動坎水の外に出ず、これ動いてすでに水を渉り、渉りてもってその難みを解く、ゆえに解と名づく○全体においては九四の一陽執政の位に在りて剛明の徳在りて能く天下の難みを解き、九二の一陽将帥の職に居て剛中の才在りてまた能く天下の難みを解く、もとこれ六五の君柔中の徳在りて四に比し二に応じ能く賢才に委任するをもってのゆえに能く難みを解くを得、ゆえに解と名づく○震の春陽の気、坎の冬水の上に在り、これ春陽の気動いて冬水の凝れるものを解く、ゆえに解と名づく○坎険震動、これ内心に険みあるをもって外動いて能く勉強してその険を解くの象あり、ゆえに解と名づく○難みを解く意あり○難みの解けたる意あり○緩む意あり○怠る意あり○離るる意あり○逐電の難みを免かるるの意あり○東方へ行く意あり○船にのりて遠行する意あり○出産の意あり○過ちを赦し罪を宥むる意あり○利害を説いて難みを説く意あり○夫婦和せずして離縁に至る意あり○二臣心を合して主家の難みを解く意あり○病は疝積の意あり○食滞吐瀉して癒ゆる意あり○下部に温熱ある意あり○胃熱ある意あり

【易学小筌】
この卦は魚の網を遁れ出たるの意にてなやみ解けちるなり、故に難儀なる処をのがれ出る封なり、然と慎まざればふたたび災いありと知るべし○損失あり○諸事思うを早くするによろし遅ければ調いがたし○遠方に通い交わる意あり○力になる人を得べし○病難を慎むべし○婚礼は吉、ただし後不慮の妨げを防ぐべし○生産安し○物事交感ずる意あり○失せ物空し○待ち人来がたし

△

41 損

【易学階梯】
損は減るなり、失うなり、この卦生卦においてはもと泰より来る、泰は上下交わりて国家安泰なり、いま来たりて損となれば上六来たりて三に居り、九三往きて上に居る、これ下を損して上に益し、民を損して君に益すなり、すべて治国の道、下も民の財を損して上に君の驕りを益せば、その国の疲弊す、ゆえに損と名づく○生卦においてはもと泰より来る、泰は彼我相対すといえどもいまだ損益を見ず、いま来りて損となれば九三を損じて上六に益す、これ我を損じて彼に益すなり、ゆえに損と名づく○生卦においてはもと咸より来る、咸は兌沢上に在り、艮山下に在りて、山沢の二気相交わる、いま来りて損となれば、艮山上に在りて兌沢下に在り、山気は上り、沢気は下り、山沢二気相交わらず、二気相交わらざれば山草木を生ぜず、沢魚鼈を生ぜず、山沢損にその功用を失す、ゆえに損と名づく○艮山上に在りて兌沢下に在り、山は漸くに夷らぎ沢は漸くに填もりて山沢倶にその形を損ず、ゆえに損と名づく○内兌悦にして外艮止なり、心に悦ぶといえども身止まりてつとめざればすなわちその道を失う、ゆえに損と名づく○減損の意あり○失亡（うしなう）の意あり○衰微の意あり○財を施す意あり○人と相与みて謀るるは成就する意あり○利欲を損ぜば徳を益し、驕奢を損ぜば財を益す意あり○志のみ有りて為さざる意あり○尊属より援けらるる意あり○不善と見て棄擲うる意あり○斟酌増減する意あり○婚姻に利ろしき意あり○応対利ろしき意あり○病は精気虚損の意あり○逆上する意あり○不食する意あり

【易学小筌】
この卦はもと減少とて物の損失の卦なれども今日の人にはかえって宜しとす、後に利徳を得るなり、また誉れあるなり、何れにも末のよろしきことありとす○親子兄弟などに付損失あるべし、然れども仁義の損は大益とす○急にする事ならず、うろうろとすること成就すべし、一度にて調いがたきことは二度も三度もすれば必ず成るべし○世話苦労多し○立身出世あるべし○病人吉○婚姻吉○胎孕やすからず○失物空し○待ち人来たらず

△

42 益

【易学階梯】
益は増すなり、得るなり、この卦生卦においてはもと否より来る、否は上下交わらずして国家否塞す、いま来りて益となれば初六往きて居り九四来りて初に居る、これ上を損じて下に益し、君を損して民に益すなり、およそ治国の道、上君の財を損して下も民に恵み益せば、その国の富強なり、ゆえに益と名づく○生卦においてはもと否より来る、否は彼我相対すといえども未だ損益を見ず、今来りて益となれば九四を損じて初六に益す、これ彼を損じて我に益すなり、ゆえに益と名づく○生卦においてはもと否より来る、否は天地交わらずして萬物通ぜず、いま来りて益となれば九四来りて初に居り、初六往て四に居る、九四の来るは天気の下降するなり、初六の往くは地気の上升するなり、天気下り地気上りて二気相交わる、二気交わればすなわち震巽草木を生ず、故に知る、九四の来るや震木の主となり初六の往くや巽木の主となるるを、これ天地相交じりて百穀草木を生ずるなり、ゆえに益と名づく○生卦においてはもと否より来る、否は陰陽交わらずして萬物否塞す、いま来りて益となれば九四来りて初に居り、初六往きて四に居る、九四の来るは陽気の下りて雷となるなり、初六の往くは陰気の上りて風となるなり、雷風の二気交々変化して萬物すなわち生々す、ゆえに益と名づく○生卦においてはもと恒より来る、恒は震雷上に在り、巽風下に在りて雷風相交らず、今来りて益となれば、巽風上に在り震雷下に在りて、雷風相交われば相助け、相助ければ相益す、雷迅（とげ）れば風怒り、風烈しければ雷激す、雷風二物もとより相助け益す、ゆえに益と名づく○巽従震動、従うて動く事に従うて、能く動き勤むればその道すなわち成る、故に益と名づく○巽の長女上に在りて巽の長男下に在り、これ夫婦相交和する象なり、夫婦交和すればその家能く斎う、ゆえに益と名づく○増益（ます）の意あり○物を得る意あり○繁盛の意あり○升進の意あり○人に助けらるる意あり○人より恵まる意あり○家業を増す意あり○人と相与して謀るるは大いに利益ある意あり○婚姻には大吉なる意あり○懐妊する意あり○応対に利ろしき意あり○利欲を増し驕奢を益せば財を損（へ）らし禍を生ず意あり○斟酌増減する意あり○病は積気にて胸［つきへんに隔のこざとへんを省いたもの］を塞ぐ意あり○元気は虚損して病勢は益々さかんなる意あり

【易学小筌】
この卦は上下とも動いて安徐（しずか）ならず、ゆえに住所安からず、心身定まらず、辛苦ありと知るべし○おもいよらざる害難あり、損耗あり、慎むべし○行くところあるによろし、旅行吉とす○婚姻養子吉○病凶○胎孕或いは障りあり

△

43 夬

【易学階梯】
夬は決なり、この卦消長においてはもと坤より来りて復となり、復より来りて臨となり、臨より来りて泰となり、泰より来りて大壮となり、大壮より来りて夬となる、いま既に夬となりてはその勢いまさに乾とならんとす、皆これ陽陰を決し剛柔を去るなり、ゆえに夬と名づく○全体においては五陽一陰に対す、一陰をもって五陽に敵し、五陽をもって一陰を去る、これ小人上に恣ままなるを、君子その徒をもってこれを決し去るなり、ゆえに夬と名づく○生卦においてはもと履より来る、履は乾天上に在りて兌沢下に在り、いま来りて夬となれば兌沢乾天の上に在り、沢気天上に上れば必ず雨となりて下る、これすなわち決まり去るの義なり、ゆえに夬と名づく○乾の至剛をもって兌の至弱に対す、我剛強にして彼が従弱なるを夬す、その決し去るや巳（はなは）だ易し、ゆえに夬と名づく○乾の剛強に対して兌の粛殺を用ゆ、王者不服を誅し、君子小人を遠ざく、みなこれ姦凶を決し去るの道なり、ゆえに夬と名づく○決断する意あり○決し去る意あり○一定する意あり○亡ぼす意あり○壮盛なる意あり○志を達する意あり○闘争には勝ち得る意あり○強いて進めば［うえ生にした月］（わざわい）に遇う意あり○零落する意もあり○棄［てへんにうえ口した月］する意あり○忌み悪（にく）む意あり○病は脚気腫満の意あり○重病なれば必死の意もあり

【易学小筌】
この卦は剛強に過るの卦なれば性急にして事を破るを慎むべし○大器決断の人品あれども柔和にして堪忍するを得ざるべし○印書の類に付苦労あるべし、また心中に苦しみて安からぬ意あり○待ち人来る○病人はあしし○婚姻凶○胎孕大抵障りなし○災難にあうことあり、然れども外より助けらるべし○人のかしらとなる意あり○旅行せばおどろく事有るべし

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44 姤

【易学階梯】
姤は遇うなり、この卦消長においてはもと坤より来りて復となり、復より来りて臨となり、臨より来りて泰となり、泰より来りて大壮となり、大壮より来りて夬となり、夬より来りて乾となり、乾より来りて姤となる、これに至りて坤の一陰再び復り来る、一陰再び復り来たれば五陽卒然としてこれに相遇う、ゆえに姤と名づく○消長においては将に遯となり否となり観となり剥となりて終に坤とならんとす、これ陰漸くに長じて陽みなその禍いに遇えるなり、ゆえに姤と名づく○全体においては初六の一陰巽遇の主にして遍（あまね）く五陽に相遇う、蓋し陽は唱え陰は和す、而して陰の道一に従うてもって常とす、いま一陰をもって遍く五陽に相遇う、ゆえに姤と名づく○生卦においてはもと夬より来る、夬と姤とは恒に相往来す、姤の一陰上ればすなわち夬となり、下がればすなわち姤となる、これその一陰再び復り来りて五陽卒然としてこれに相遇う、ゆえに姤と名づく○巽風乾天の下に在り、風の天下を行くや旁（あま）ねく萬物に触れ遇う、ゆえに姤と名づく○彼乾剛にして我柔順なり、人剛強にして我を容れずといえども己れ柔順をもって応ずれば彼我を拒まずして相遇うるをなす、ゆえに姤と名づく○巽を不決とし乾を剛強とす、内心は不決にして外行剛強なるものは事々に禍に遇うものなり、ゆえに姤と名づく○遇う意あり○卒然として禍に遇う意あり○期せずして福に遇う意もあり○災害継ぎ生（おこ）りて漸く衰微に向かう意あり○事を始むる意あり○復り来る意あり○外剛なるも内不決断なる意あり○疑惑多き意あり○媚び諂（へつら）う意あり○婦人は不貞なる意あり○［にんべんに妄］人の始めて生（おこ）る意あり○不図（ふと）病の生（おこ）る意あり○病は風邪に冒さるる意あり○始めて積気の生（おこ）る意あり○頓死の意あり

【易学小筌】
この卦は一陰にして五陽にあえば不貞の女のごとし、ゆえに争いありと知るべし○またちょうあいの意あり○思いよらずしてあいあうの意あり、相談事都（すべ）て人に頼みよること調う○またこの卦は物の集まると散りうせるのかたちあり、定まりなき議あれば、人も分別工夫定まらずしてまよう意あり○婚礼養子などのことあり、また女につきなやみあり○貴人に近づくの意あり○胎孕障りなし○病凶兆なれども変卦によるべし○失せもの出ずべし○待ち人来る

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45 萃

【易学階梯】
萃は聚（あつまる）なり、この卦全体においては、二陽は四五に聚まり四陰は二陽に聚まる、臨升小過観の如きも二陽相聚まるといえども君相の位に当たらざるもって萃と釈せず、今九五の君と九四の宰相と四五君相の位に聚まりて倶（とも）に剛明の徳有りて威厳衆を服し明察、政を正す、これもって上下の四陰は四五に聚まり天下の衆民はその君相に聚まる、ゆえに萃と名づく○兌の和悦上に在りて坤の順従下に在り、上和悦にして下を愛すれば下順従して上に聚まる、ゆえに萃と名づく○内柔順外和悦す、これ内柔順の徳ありて外和悦して人を愛するときは人能く我に聚まる、ゆえに萃と名づく○兌悦坤順、我順（した）がい彼悦ぶ、我順（したが）えば彼に聚まり、彼悦べば我に聚まる、ゆえに萃と名づく○坤の母下に在りて兌の少女上に在り、母は少女を愛し少女は母を慕うて母子相聚まるるを致す、ゆえに萃と名づく○生卦においてはもと臨より来る、臨は兌沢坤地の下にあり、いま来りて萃となれば、兌沢坤地の上に在りて水気地上に潤い上る、これすなわち聚まるの義なり、ゆえに萃と名づく○聚まる意あり○財の聚まる意あり○人の聚まる意あり○彼我の損益においては財の彼に聚まる意あり○親しむ意あり○物に感ずる意あり○下る意あり○不慮に災害の生（おこ）る意あり○心に悦んで事に従う意あり○彼は富んで我は貧しけれども［てへんに極からきへんを省いたもの］（すく）い助けざる意あり○都会の意あり○親子相聚まる意あり○病は積聚の意あり○留飲の意あり

【易学小筌】
この卦は物の集会してはんじょうするの意あり、争論の障りあり、慎むべし○中絶離別の人にめぐりあい、また親しくなる意あり○病人は凶○婚姻吉○胎孕平らなり○待ち人来る○うせ物出べし○忌みにくまるることあり慎むべし○旅行よろしからず○願望かなうべし、ふしんのさまたげをふせぐべし

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46 升

【易学階梯】
升は登るなり、この卦生卦においてはもと泰より来りて復将に泰に往かんとす、泰は地中に陽気あるの卦なり、然るに初六の一陰上六の外より来りて巽風の主となり咸卦の主となる、風の物たる後必ず地上に升登す、ゆえに升と名づく○坤順巽従、順（したが）って従う、およそ士君子の道盛徳の大人に順従すれば徳位ともに升進す、ゆえに升と名づく○生卦においてはもと観より来りて復（また）将（まさ）に往かんとす、観は巽木坤地の上に在り、いま来りて升となれば、巽木坤地の下に在り、これすなわち果実（きのみ）を地中に播くの象なり、果実の地中に在るや後必ず時を得て発生せんとす、これすなわち地下より地上に升り進む義なり、ゆえに升と名づく○生卦においてはもと観より来りて復将に観に往かんとす、観は巽風坤地の上に在り今来りて升となれば巽風坤地の下に在り、これ風地上より地下に入るの象なり、然るに風の物たるもと地中に在るものに非ず、これもって後必ず発出して地上に升り行かんとす、ゆえに升と名づく○升る意あり○進み行く意あり○来たらざる意あり○始めとする意あり○発出する意あり○傷（やぶ）るる意あり○小を積んで大となし卑しきより高きに至る意あり○立身発達する意あり○繁盛の意あり○従えども親しまざる意あり○妻妾臣僕等の逃れ去る意あり○病は肝積脾土を［克に寸］て逆上する意あり○疝毒にて留飲ある意あり○発狂する意あり

【易学小筌】
この卦は草木の地中に有りて次第しだいに地上に発生する意にして段々立身出世する卦なり○住所に苦労あり○心中安寧ならず、然れども漸々吉事あり○願望かなう、はん［読めず］ん［読めず］みやうにすれば凶○病人おもし○婚姻なるべし○たび立やとが［読めず］よし○まち人は来り、ゆく者かならず通ず

△

47 困

【易学階梯】
困は窮まるなり、苦しむなり、生卦においてはもと節より来る、節は坎水兌沢の上に在り、いま来りて困となれば、坎水兌沢の下に在り、これ沢上の水沢に漏れ下るの象なり、蓋し沢水を得ざれば魚鼈生ぜず貨財殖せず、これすなわち窮迫困［こざとへんに厄］の義なり、ゆえに困と名づく○生卦においてはもと否より来る、六二の一陰往きて上に居て兌沢の主となり上九の一陽来りて二に居て坎水の主となる、これまた沢上の水沢下に漏れ下るの象なり、否はこれ否塞なり、困はこの困窮なり、もし否塞して通じざれば財物散失して終に空乏に至る、ゆえに困と名づく○全体においては四五は上に［読めない］（おお）われ二は初三に［読めない］（おお）わる、みなこれ陽陰に［読めない］（おお）はる、陽陰に［読めない］（おお）わるればすなわち困（くる）しむ、ゆえに困と名づく○兌の少女上に在りて坎の中男下に在り、男女に［読めない］（おお）われ夫妻に従う、ゆえに困と名づく○我坎険にして彼兌悦なり、我険（なや）んで彼に求むれども彼我を助けずしてかえって我を嘲る、ゆえに困と名づく○坎険兌悦、険（なや）んでもって悦こぶ、それ険（なや）みて処（い）て悦こばざるものはすなわち濫（みだ）れ、険みに処て能く悦こぶものは必ず通ず、険んでもって悦こぶはこれ困に処するの道なり、ゆえに困と名づく○困窮の意あり○困苦の義あり○我は求むれども彼は助けずしてかえって嘲り哂う意あり○居所を失い流浪する意あり○出奔するものは再び帰り来たらざる意あり○人に説けども信ぜられざる意あり○節度を失うて困［窮の弓を呂］に至る意あり○女の為に苦しむ意あり○行かんとすればあしなえの険阻に向かうが如く、居らんとすれば針の筵に座するが如く、進退窮まりて迷惑困苦する意あり○水に投じて死する意あり○困窮に処（い）て能く辛抱すれば時の至る意あり○病は胸脇苦満心下［やまいだれに否］［革に更］して小腹急痛する意あり○精気大いに虚損したる意あり○痢疾の意あり

【易学小筌】
この卦は困窮難儀の卦にして諸事不自由にわが志通達せず、苦労多き卦なり○住所を離るる程の辛苦あるべし、妻子などにつき苦労あり○願望叶いがたし、大よう凶なりと雖ども貴人の救いを得て立身出世する意あり○学者この卦を得ば吉兆とす、かくのごときの説は予に一家言あり、この卦に限るべからず○病難を慎むべし○婚姻吉○胎孕安し○やまい治すべし○遺失尋ね得がたし○苦しみあれどものちの栄花を楽しむべし○待ち人遅し

△

48 井

【易学階梯】
井は地に穴して水を取るの処なり、これ日に用いて生を養い命を有つ所以のもとなり、この卦坎水上に在りて巽木下に在り、これ木をもって［うえ秋した瓦］（いしだたみ）となして水その上に出るものは井の体なり、ゆえに井と名づく○生卦においてはもと渙より来りて復将に渙に往かんとす、渙は巽木坎水の上に在り、今来りて井となれば、巽木坎水の下に入る、これ木をもって瓶となり水に入れて水を上げるものは井の用なり、ゆえに井と名づく○生卦においてはもと泰より来る、泰は乾陽坤地の中に在りて陽気地中に通行するの象なり、陽気地中に通行するものはすなわち水脈なり、いま来りて井となれば六五来りて初に居て巽風の主となり初九往きて五に居て坎水の主となる、それ地に穴すれば風すなわち入る、風入れば水すなわち湧出す、もとこれ水脈に困りて井を為るを得、ゆえに井と名づく○養う意あり○通ずる意あり○日に用いて便利なる意あり○険（なや）みに巽（したが）う意あり○そのところに止まりて他へ移らざる意あり○甕に孔ありて水の漏れ脱るが如く、漸々に失財する意あり○成功に向かわんとして敗に見（あ）う意あり○得るるもなく喪うるもなき意あり○家産とする意あり○家督とする意あり○尽きざる意あり○疑惑多くして決断なく依々として険（なや）みに係（つな）がる意あり○病は積気にて留飲ある意あり○湿熱ある意あり○疝毒ある意あり

【易学小筌】
この卦は万事あらため替わることにはよろしからず、おのおの当たりまえの職分をつとめて猥（みだり）に新規のことにとりかかる事なかれ、皆損ありて益なし○婚姻半吉○病重し長かるべし○胎孕すこし安からぬ意○うせ物あるべし○他国などより帰るには吉、いずるには凶○思慮うごかずたよりなきこころあるべし、然れども大いなる災害なし

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49 革

【易学階梯】
革は改めるなり、変わるなり、この卦兌沢上に在り離火下に在りて水火相対す、蓋し水多ければ火に勝ち、火盛んなれば水に勝つ、なお寒勝てば暑去りて冬となり、暑勝てば寒去りて夏となるが如く、水火相滅息するはすなわちこれ変革の義なり、ゆえに革と名づく○離の夏先に在りて兌の秋後に在り、夏既に去りて秋将に至らんとす、夏は太陽なり秋は小陰なり、これ陰陽改革の時にして草木黄ばみ禽獣の羽毛改まり変わり萬物皆変革す、ゆえに革と名づく○兌の少女上（かみ）に在り、離の中女下（しも）に在り、姉妹おなじく父母の家に育（やしな）わるといえどもその嫁ぐところ各々異なるをもってその志もまた相得ざるあり、これもまた変革の義なり、ゆえに革と名づく○兌金上に在りて離火下に在りこれ火をもって金を焼くの象なり、それ火をもって金をやけばその形すなわち変革す、ゆえに革と名づく○兌沢上（かみ）に在り、離火下（しも）に在り、水の物たる潤下して上に上らず、火の物たる炎上して下に下らず、水火各々その性用を異にす、これもまた変革の義なり、ゆえに革と名づく○離日兌西に没するの象あり、これ昼夜改革の時なり、ゆえに革と名づく○兌沢上に在り離火下に在り、これ火をもって水を焼くの象なり、蓋し火を木に施し水を鼎に入れてもって烹［食へんに壬］（にたき）をなせばすなわち能く剛（こわ）きを変じて柔（やわらか）きとなし、腥（なまぐさ）きを変じて熟となす、これもまた変革の義なり、ゆえに革と名づく○改革の意あり○変革の意あり○ふるきを去る意あり○黄昏の意あり○滅尽する意あり○異なる意あり○和せざる意あり○忌み憎む意あり○相争う意あり○勝敗においては我彼に勝つ意あり○損失の意あり○機知雄弁をもって心を動かし事を変えしむる意あり○病は労（やまいだれに祭）の意あり○大病なれば必死の意あり

【易学小筌】
この卦は万事改めるによろし、今まで為すことの世に用いられざるの類は速やかにそのふるきをすてて新しきをなすべし○内に明らかに外悦ぶの儀あれば願望障りなし、初めは調い難きことあれども末には成就す○住所苦労あり、或いはふしんなどの世話あるべし○色情あり、女難を慎むべし○物のつきて始まる意あり○立身出世あり、おそし○争論を慎むべし○さいわいあれどもへだてらるる意あり○婚姻ならず○胎孕平○病大てい治しがたし○失物空し○待ち人ひまあり

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50 鼎

【易学階梯】
鼎は烹［食に壬］（にたき）の器なり、これ日に用いて生を養い命を有つゆえんのもとなり、この卦全体においては初を足とし二三四を腹とし五を耳とし上を弦とす、これすなわち鼎の画象なり、ゆえに鼎と名づく○生卦においてはもと家人より来る、家人は巽木離火の上に在り、いま来りて鼎となれば巽木離火の下に在り、これ木を火に入れて烹［食に壬］を成すの象なり、蓋し烹［食に壬］の道たる能く剛（こわ）きを変じて柔（やわらかき）となし腥（なまぐさ）きを改めて熟となしてもって人の性命を養う、これすなわち鼎の用なり、ゆえに鼎と名づく○改まる意あり○変わる意あり○養う意あり○調和する意あり○日に用いて廃しがたき意あり○新しきを取る意あり○産業とする意あり○家督相続の意あり○明主に奉仕すれば身を立て功を成す意あり○食日（あさ？）の意あり○疑惑の発（ひら）ける意あり○病は肝気より熱を生す意あり○傷寒の意あり

【易学小筌】
この卦は事を改むるに吉、鼎は鍋の類にして物を煮て食、用を通ずるの具也、堅きを柔らかにし腥きを熟し皆変革の義あり、故に人も旧きを捨てて新たに事を始めるに宜しとす○争論を慎むべし○損失あり○福を受くべし、又親しき友を得べし○住所又は文書の類、口舌あり、慎むべし○婚姻成○胎孕不安○病は変あり○待ち人来る

△

51 震

【易学階梯】
震は動なり、一陽二陰の下に動く、震はもと八卦の名なり、この卦重震ゆえにまた震と名づく○動く意あり○疾行（はやくゆく）の意あり○勉強する意あり○才能ある意あり○遂に行く意あり○屡（しばしば）驚くことあれども傷（やぶ）れに至らざる意あり○躁動の意あり○興起する意あり○勇敢なる意あり○恐懼する意あり○敢作（かんさく）の意あり○親跡相続の意あり○事を建て功を成す意あり○発出する意あり○憤怒する意あり○出奔する意あり○声名遠く聞ゆる意あり○にわかに立身して後形跡（あとかた）もなく消亡する意あり○屡絶えて屡興る意あり○時においては春とする意あり○病は積気急痛する意あり

【易学小筌】
この卦はもと祥福ありて繁盛の卦なれどもこれも常人には大抵よろしからず、声あって形なきの卦なれば吉凶ともに始めて聞く程にはなしとしるべし○位官の人、威勢ある人物に出る多し、物を審らかにして断すべし○驚く事あるべし○物の変動する意あり、又騒がしき意あり○願望障りあり○世上に沙汰ある意あり○婚姻よろしからず○病人安からず○胎孕臨産にのぞんで得ば障りなし○待ち人信あり○失せ物むなし

△

52 艮

【易学階梯】
艮は止（とど）まるなり、一陽二陰の上に止まるは艮、もと八卦の名なり、この卦重艮ゆえにまた艮と名づく○止まるの意あり○止むるの意あり○事を止めて為さざる意あり○一事に止まりて外へ移らざる意あり○滅亡する意あり○親跡相続の意あり○篤実なる意あり○偏固にして人と和せざる意もあり○妄動せざる意あり○出奔するものは帰り来る意あり○期人（まちびと）は速やかに来る意あり○分家する意あり○一山を越得てまた一山に遇うが如く、艱難多き意あり○遅滞の意あり○丁寧に過ぎて事の速やかに成らざる意あり○慎み守りて終有つ意あり○妨げ多き意あり○［けものへんに艮、狼？］戻なる意あり○病は腫物の意あり○婦人は経水不順の意あり○中風の意あり

【易学小筌】
この卦止まるによろしく進むに損あり、憂喜の山重りたる儀とす、故に物事半ば調い半ば通達しがたし○危うき難儀または金銀財寶に損あり然れども外より救い助けの意あり○進んで帰る道をわすれ迷惑する意あり○丁寧なる意あり○漸く吉に向かう○婚姻平○病治しがたし○失ものあり○胎孕安からず○待ち人来たらず

△

53 漸

【易学階梯】
漸は進むなり、この卦巽木艮山の上に在り、樹木山上に生（おこ）れば日を累（かさ）ねて［禾に肖］（ようや）くに繁茂す、これすなわち［禾に肖］（ようや）くに進むの義なり、ゆえに漸と名づく○生卦においてはもと否より来る、否は否塞して通ぜず、いま来りて漸となれば六三の一陰進んで四に至りて僅かに一位を歴、これ漸序をもって進むなり、ゆえに漸と名づく○内艮止に外巽順なり、内心を一事に止めて外その事に順従すればその道ようやくに進むるあり、ゆえに漸と名づく○ようやくに進む意あり○尺寸の樹も年を累ねて大木となるが如く、懈怠なく勉強すれば大いに功を成す意あり○篤実にして能く人に順がう意あり○速やかならざる意あり○夫婦和せざる意あり○行いの正しき意あり○時の至るを俟つ意あり○急速に事を作（な）せば却って敗れある意あり○小を積んで大と成す意あり○漸くに繁盛する意あり○官位上進の意あり○病は食毒胃中に停滞して漸々に積聚となる意あり

【易学小筌】
この卦は山上に木を植えて茂生する意にて立身出世ありとす○女の男を思う卦なり、ゆえに婚礼なるとす○すべて色情あり○悩みあり○病人大凶○待ち人来る、達する物かならず通ず○胎孕障りなし○失せ物出がたし○住所苦労あり

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54 帰妹

【易学階梯】
帰妹は少女の嫁するなり、この卦兌の少女をもって震の長男に下る、これ少女長男に嫁ぐの義なり、ゆえに帰妹と名づく○兌悦震動、悦んで動くの象あり、それ夫婦の道たるやその義天地に配して人倫のもとたり、これをもって悦んで動けばその情相和してその道長久なり、ゆえに帰妹と名づく○男女ともに生涯［さかなへんに衆］寡にて居るべきかまた嫁聚すべきかと云うには嫁聚して利ろしき意あり○婚姻には夫婦和せざる意あり○頓速なる意あり○速やかに事の成る意あり○利欲の意あり○色欲の意あり○妾を畜うに利ろしき意あり○帰入する意あり○帰依する意あり○物を帰（おく）る意あり○［女へんに揺からてへんを省いたもの］奔不貞の意あり○賊心ある意あり○病は湿熱にて逆上する意あり○微毒（ばいどく）の意あり○宿水の意あり

【易学小筌】
この卦は不意に間違いのある卦なれば慎むべし○色情あり、およそ女に付いて障りあり○願望妨げあり、我ものの我用に立たぬ意あり○相談契約その期を失い破るるの意あり○悪人にささえられ我正直顕れず難渋に逢う事あり、慎むべし○婚礼凶○胎孕障なし○病人凶○失せ物出べし○待ち人来る

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55 豊

【易学階梯】
豊は大なり、この卦離明震動、内明らかにして外動くの象なり、蓋し聡明ならざれば理に通ずる能わず、動き勤めざれば事を成す能わざれば、明らかにして能く動き勤むるときは百事一失うなくしてその道巳（はなは）だ盛大なり、ゆえに豊と名づく○震雷上（かみ）に在りて離電下（しも）に在り、雷電一時に発してあるいは奮いあるいは閃けばその勢い巳（はなは）だ盛大なり、ゆえに豊と名づく○離日震動、体を合す、日天上に動けば晋（あま）ねく四海を照らして光明巳だ盛大なり、ゆえに豊と名づく○離の智者内に在りて謀り震の勇者外に出て動く、それ智勇力を劾（あわ）せて事を行えばその道巳だ盛大なり、ゆえに豊と名づく○大いなる意あり○盛んなる意あり○明智ありて能く勉強する意あり○智謀ある者勇者なる者と与和して大功を立てる意あり○盲者の［読めない］者を負うて険阻を［読めない］るが如く、二人与和して功を成すあれども聊か疑念を懐いて矛盾するあれば忽ち大いなる敗れを生（おこ）す意あり○晦まさるる意あり○欺かるる意あり○傷（やぶ）らるる意あり○暗き意あり○惑う意あり○故障多き意あり○火災の意あり○病は［やまいだれに於］血の意あり○発狂の意あり

【易学小筌】
この卦は盛大の勢いある卦也、然れども余り大過にて却ってそのかたちを失う意に見べし、たとえば水中の月の如く目に見て手に取られぬ意に考え合わすべし○虚言謀計あるべし○思いよらぬ驚きあるべし○損失あり○公事訴訟喧嘩を慎むべし○貴人より物を得る意あり○婚礼凶○胎孕ならず○失せ物たずぬべし○待ち人来たらず

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56 旅

【易学階梯】
旅は［うえ西したひだり革したみぎ馬］旅なり、行旅なり、この卦離火艮山の上に有りて火山を焚（や）くの象なり、火の山を焚くや山は止まりて遷らず火は遷りて止まらず山は猶駅舎の如く火は猶旅人の如くにして遷転して居らず、これすなわち行旅の義なり、ゆえに旅と名づく○生卦においてはもと遁より来る、六五の一陰初六の下より上りて往きて五に居り、離麗の主となりて外に麗き止まる、これ己れが家を遯れ出て外舎に麗き止まるなり、これすなわち旅客の義なり、ゆえに旅と名づく○旅行の意あり○居所を喪う意あり○他所へ移転する意あり○出奔の意あり○親族契家に乏しくして為に助けらるるなき意あり○家内睦まじからざる意あり○利害を弁まえて事を止むる意あり○獄中より免れ意でたる意あり○篤実にして明智の人に麗き順（した）がう意あり○火災の意あり○心事定まらざる意あり○病は大熱身を焦がす意あり○血症にて熱を生（おこ）す意あり○腫物の意あり○中風にて半身不随し熱を生す意あり

【易学小筌】
この卦は始めよろしく後に悲しみを得る意あり、万事に付き慎むべし○又月の半ばひらきたる意あれば小事には宜しき義あり、その占う事に付きて断すべし○心中うきたる物のとおく安からぬと知るべし○住所に付き苦労多し、旅宿りして居る如く心ぼそく思うべし○旅行宜しからず、盗難をふせぐべし○病人は凶とす、一端よろしく共終には死す○親を失い困窮流浪の人意あり○婚姻宜しからず○胎孕なやみあり○失せ物急に尋ぬべし○まち人来る

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57 巽

【易学階梯】
巽は遜なり、一陰二陽の下にあれば必ず遜（した）がう、巽もと八卦の名なり、この卦重巽ゆえにまた巽と名づく○遜順の意あり○容入の意あり○媚び諂う意あり○疑惑多き意あり○進退果たさざる意あり○不決断なる意あり○心志定まらざる意あり○往来する意あり○隠伏する意あり○多欲なる意あり○奸［読めない、応？］なる意あり○出奔の意あり○売買（あきない）に利ある意あり○陰鬱して楽しまざる意あり○命令下行する意あり○繁盛する意あり○巧言令色にして薄情なる意あり○巽与（じょうず）の言をもちいて情に悖らず事を敗らざる意あり○事有れども果たさずその期に迫って驚き躁（さわ）ぐ意あり○時においては春とする意あり○病は積聚にて気を塞ぐ意あり○肝鬱にて逆上し甚だしうしては労療となりあるいは発狂となる意あり

【易学小筌】
この卦は通達の意ありて思うことを遂ぐるの意なり、然れども横合いより障りありて事を仕損ずるなり、兎角人に随ってするによろし○遠方へ通ずること有るべし、触れながしの段々至る意あり○住所辛苦あり、心身定まらず迷いあり○願望十にして五ツを得べし○待事信いたる○婚姻不宜○胎孕平○病人あやうし○失せ物出がたし、遠く去るべし、隠るる意あり○難渋に逢うをあるべし、また外より助けらるる意あり

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58 兌

【易学階梯】
兌は悦なり、一陰の卑賤なるをもって二陽尊貴のうえにあり、卑しき者尊き者の上に在ればその情必ず悦ぶ、兌はもと八卦の名なり、この卦重兌ゆえにまた兌と名づく○喜悦の意あり○柔和なる意あり○親和する意あり○喜慶ある意あり○時においては秋とする意あり○毀（そこ）ない傷（やぶ）る意あり○憂愁の意あり○露見する意あり○親跡相続する意あり○講習（けいこ）する意あり○衆口喧（かまびす）しき意あり○我より求むれども彼は背きて肯（うけ）がわざる意あり○愛する意あり○好む意あり○卑劣なる意あり○情の厚き意あり○感服する意あり○病は胸［つきへんに隔からこざとへんを省いたもの］に宿水ある意あり○留飲の意あり○［やまいだれに於］血ある意あり

【易学小筌】
この卦は悦びの顕るる卦にしてよき卦なれども物事締りなく埒明かぬ意あり、考え合わせて知るべし、又外見はよく内心よからぬ意あり○口舌争いありと知るべし○色欲のなやみあり○願望及び病人過半よろしからず○心身苦労多し、後には吉○文学の事にはよろし○婚姻口舌をふくむ○胎孕平とす○失せ物出がたし○待ち人来る

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59 渙

【易学階梯】
渙は散（ちらす）なり、この卦巽風坎水の上に在り、風の水上を行くや水必ず風に散らさる、ゆえに渙と名づく○巽の春風をもって坎の冬氷に尚う、これ春風冬氷を渙散するの象なり、ゆえに渙と名づく○坎険巽順、我険（なや）んで彼順う、我すでに険みに陥るといえども彼順うて我険みを渙散す、ゆえに渙と名づく○生卦においてはもと否より来る、否は天地否塞して二気相交わらず、いまきたりて渙となれば六二の一陰上りて四に居りて巽風の主となり九四の一陽下りて二に居って坎水の主となり地気は上りて風となり天気は下りて雨となる、これに至りて否塞の気渙散するるを致す、ゆえに渙と名づく○生卦においてはもと井より来る、井は巽遜をもって坎険の中に巽（い）る、いま来りて渙となれば坎の険の外に出ず、これ険みを渙すの義なり、ゆえに渙と名づく○生卦においてはもと井より来る、井は坎水前に在りて巽木後ろに在り、未だ坎の水険を越える能わず、ゆえに難（なやみ）なり、いま来りて渙となれば巽木坎水を越えるの象あり、これ険みを渙すの義なり、ゆえに渙と名づく○生卦においてはもと否より来る、否は上下相交わらずして国家否塞す、今来りて渙となれば九四の一陽来りて二に居て宰臣の位に当たりて剛中の才をもって上九五の君を輔け六二の一陰往きて四に居て執政の位に当たりて柔正の徳をもってまた同上九五の君を輔く、これにおいて二四共に力を劾（あわ）して国家否塞の難を渙散す、ゆえに渙と名づく○難みを散らす意あり○渙散する意あり○離散する意あり○家財を分散して難みを解く意あり○心気散乱する意あり○乗船して遠行する意あり○他（ひと）に救い助けらるる意あり○他（ひと）より我財を散す意あり○瓶水の転覆するが如く資財一も残らず空乏に至る意あり○小船の風波に漂うが如く艱難流浪する意あり○風雨に遇うて険阻をこえるが如く艱難困窮する意あり○病は痢疾の意あり

【易学小筌】
この卦はものの散り解くる意ありて悪事の身を離るるの吉兆とす、然れども散りみだるるの儀ありて損失あるべし○遠方に往来して又は遠路他国より取り結ぶの事は皆障りなし○横合いより思いよらぬ災難また損失を受くること、又世話苦労あるべし○住所苦労あり、宿替えなどよろし○待ち人来がたし○婚姻なるべし○胎孕臨産の時筮すれば平○病大抵凶なれども病人の新久によるべし○願望遅く成るべし

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60 節

【易学階梯】
節は度に中（あた）り分に適し限り有りて止まるの謂れなり、この卦坎水兌沢の上に在り水の沢に有るや多ければ溢れ寡ければ渇く、これ能く限量に応じて止め蓄うるをなす、ゆえに節と名づく○生卦においてはもと泰より来る、泰は前低く後ろ高くしてすでに高低の象ありといえどもいまだ沢と水とを見ず、いま来りて節となれば六五の一陰来りて三に居て兌沢の主となり九三の一陽往きて五に居て坎水の主となる、これ沢を作りて水を入るの意なり、蓋し水の沢に在るやその分量を得て止まる、これすなわち節の義なり、ゆえに節と名づく○生卦においてはもと泰より来る、泰は陰陽偏頗にして一は有余し一は不足す、いま来りて節となれば有余を損（へ）らして不足に益す、これ損益節に中りて各その宜しきを得たり、ゆえに節と名づく○生卦においてはもと泰より来る、泰は安泰にして国家故なし、今来りて節となれば九三の一陽往きて五に居て坎険の主となり六五の一陰来りて三に居て兌悦の主となる、これ険難すでに生じて悦んで能くその険みに処（おる）ものはすなわち節操なり、ゆえに節と名づく○生卦においてはもと臨より来る、臨はすでに兌沢ありといえども未だ水なし、いま来りて節となれば九五の一陽初九の下より往いて五に居て坎水の主となる、それ水の沢に在るや限量ありて止まる、これすなわち節の義なり、ゆえに節と名づく○坎険兌悦、険んでもって悦ぶ、それ険みに処して能く悦び守るものはすなわち節操なり、ゆえに節と名づく○節度ある意あり○節に中る意あり○止まる意あり○沢に水有るが如く慎み守りて害（そこな）い傷（やぶ）らざる意あり○難みに安んじて時を俟つ意あり○苦節にして窮迫する意あり○辛抱強き意あり○相与みて用を成す意あり○節を傷り度を失えば困窮に至る意あり○病は上部に毒ある意あり○胸［つきへんに隔てるのこざとへんを省いたもの］に宿水ある意あり○［やまいだれに於］血ある意あり

【易学小筌】
この卦は物事滞りて障りある卦なり○又自然に程よき意も有りて物に違い背くことあり共見べし、然れども大略運の拙きとしるべし○物に限りありて止めらるる意あれば諸事手広くすること不宜○不意に災難にあうことあり慎むべし○閉塞（とじふさが）る意あり○他国等の便りを占うには吉、願望叶いがたし○旅行よろしからず○婚姻平にして遅し○病人凶○失せ物しれがたし○待ち人来たらず

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61 中孚

【易学階梯】
中孚は内に信（まこと）あるの謂なり、この卦全体においては二陰内に在りて四陽外に在りて二体においては二五みな陽なり、陰は虚にして陽は実なり、二陰の内に在るは中虚の象なり、二五みな陽なるは中実の象なり、中虚は無心の信（まこと）なり、中実は有心の信なり、中虚は信のもとなり、中実は信の質なり、中虚中実ならび具わって有心无心の信皆全備す、かつ中孚は全体の離にして離を心とす、信はすなわち心に固有するものたり、ゆえに中孚と名づく○兌悦巽従、心に悦んで身かつ従うものは信の為なり、ゆえに中孚と名づく○兌悦巽順、我悦んで彼従う、これ彼我ともに信あるの義なり、ゆえに中孚と名づく○巽風兌沢の上に在り、風の沢上に在るや風動けば水もまた従って動く、然れどもその動くに心なく動かすに心なし、心のうして動くは皆自然なり、自然に動くはすなわち信なり、ゆえに中孚と名づく○信実（まこと）の意あり○親和する意あり○彼我相悦ぶ意あり○会議の済（ととの）う意あり○二人与合て事を作す意あり○巧言令色にして信義なき意もあり○相偽るもあり○色情の意あり○船に乗る意あり○悦んで人に順がう意あり○至信にしても求むれば物の我に応ずる意あり○病は大熱の意あり○積気胸［月へんに隔のこざとへんを省いたもの］を塞ぐ意あり

【易学小筌】
この卦は誠あるの卦にして心中正直丁寧なれば吉とす、我邪の事にこの卦を得ば大凶目前に来ると知るべし○相談事調う、次第しだいに宜しきをありとす○心身苦労ありて内包居る意有○心を一図にしてへんずる事なくんば願望叶う○親しく愛せらるる意あり○婚礼は吉○病人は大凶○胎孕は平○待ち人来たらず○失せ物久しくして信あり○始めは凶後は吉なり

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62 小過

【易学階梯】
小過は小しく過ぐるなり、この卦全体においては二陽内に在りて四陰外に在り、内は主にして外は客たり、陽は強く陰は弱し、四陰多しといえども弱くして、かつ客たり、その義大いに過ぐる能わず、ゆえに小過と名づく○震雷艮山の上に在り、山は止まりて動かず、雷は動きて止まらず、一は止まり一は動く、故に小過と名づく○生卦においてはもと頤より来る、頤は震雷艮山の下に在り、いま来りて小過となれば震雷艮山の上に出づ、これ雷動いて山を過ぐるなり、ゆえに小過と名づく○震動艮止、一は動き一は止まる、これ動くものその止まるものに過ぐ、ゆえに小過と名づく○震の長男上に在りて艮の少男下に在り、長男をもって少男に較ぶればその齢小しく過ぎたりとす、ゆえに小過と名づく○小しく過ぐる意あり○過失ある意あり○彼我背き離るる意あり○彼は為せども我は止むる意あり○或いは為さんとし或いは止めんとして志両端に分かる意あり○親和せざる意あり○小事は成れども大事は済（とと）のわざる意あり○二人同行する意あり○家を逃れ出る意あり○病は中風にて半身不随の意あり○裏熱盛んにして四肢厥冷する意あり

【易学小筌】
この卦は鳥の飛ぶを目に見、その声を耳に聞けども、手に取ることあたわず、この意にて萬事調い難し、又大きなる災いなけれども常に苦労気がね多し、我心に任せぬ事あり○物の十分に満さんとすれば又不足の事を発し調いがたき卦なり、小事にはよろし、大事にはよろしからず○旅行等もなやみあり○人と中の絶つる意あり○又背くの儀あり○婚姻調いがたし○胎孕たいら○待ち人おそし○病治すべし

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63 既済

【易学階梯】
既済は既に済（とと）のうなり○この卦生卦においてはもと未済より来る、未済は坎水離火相対すといえども潤下の水は下に在り炎上の火は上に在りて水火未だ相交わらず、今来りて既済となれば坎水離火の上に在りて水火相交わるを成す、蓋し水火の二物相交わるをなせば萬物これに生じ萬物これに育す、ゆえに既済と名づく○生卦においてはもと未済より来る、未済は離火上に在り坎水下に在りて水火未だ相交わらず、いま来りて既済となれば坎水離火の上に在り、これ猶水を鼎に入れ火を竈に燃やして烹［食に壬］をなすが如し、それ烹［食に壬］の道たる人の性命を養うてもって生生无窮の大用を済（な）す、ゆえに既済と名づく○全体においては六爻相応じ六爻相比し六爻皆正を得て交応比正の四つのものみな既に済う、ゆえに既済と名づく○事の既に済う意あり○定まる意あり○適当する意あり○有用の意あり○事既に済うて後また乱るる意あり○窮まる意あり○尽くる意あり○滅亡する意あり○彼我相争うあれば中人を用いて和睦の済う意あり○夫婦和せざる意あり○勝ち負けにおいては我彼に負くる意あり○病は痰飲の意あり○特に病毒なしといえども元気涸れつきて自ら死に至る意あり

【易学小筌】
この卦は物の乱るるの始めとす、一端は成就するとも末に破るる意あり○渡りに行きて船を得たる意ありて宜しきことに逢う儀あれども今より後の変卦なれば油断怠りなく貞正を守るべし○色欲あり、然れども婚姻には凶なり、何事も終わりを遂げざる意あり○人と仲違いあり○胎孕平○病人凶○失せ物むなし

△

64 未済

【易学階梯】
未済は未だ済わざるなり、この卦生卦においては将に既済に往かんとす、既済は坎水上に在り離火下に在りて水火既に相交わる、いまこの未済は離火上に在り坎水下に在りて水火未だ相交わらず、水火相交われば萬物既に生育し、水火相交わらざれば萬物未だ生育せず、ゆえに未済と名づく○生卦においては将に既済に往かんとす、既済は坎水上に在り、離火下に在りて、水火既に相交わる、今この未済は離火上に在り坎水下に在りて水火未だ相交わらず、これなお水を鼎にし火を竈に置かざるが如く、水火各々その所を得ずして未だ烹［食に壬］の用を済さず、ゆえに未済と名づく○全体においては六爻相応ずといえども六爻未だ正を得ず、六爻相比すといえども六爻未だ相交わらず、故に未済と名づく○事の未だ済わざる意あり○定まらざる意あり○適当せざる意あり○夫婦和せざる意あり○背き離るる意あり○争論闘諍の意あり○相悪む意あり○粉雑（もつれあう）する意あり○仁智兼備わる意あり○家内区々になり親和せざる意あり○明誠相備わる意あり○病は鶴膝風の意あり○大病なれば元気消衰して救いがたき意あり

【易学小筌】
この卦はものの成就する卦なり、いまだ用をなさず、然れどもこれより後相交わることを始めるの吉兆とす、願望調うべし○胸中に物ありてその品を云い出すやいまだいいださざるやの間と知るべし○心身辛苦あり○病凶兆○失せ物出べし、思いの外なる処を尋ぬべし○待ち人来たらず○女はよろこびあり、男は窮苦ありてのち宜しきの意あり

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吾唯知足